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レイラ
街を目指して
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とは言え、ロボットである彼女の立場でできるのは、
『身体生命を保護する』
ことだけなので、
『社会的な権利を保護・保障する』
という点については、やはり人間でなければできない。そうなると、当然、<行政>及び<法によってその正当性が裏打ちされた治安機構>に彼女を保護してもらうしかない。
しかし……
『しかし、この状況で果たして十全な機能を有した行政や治安機構が存在するのでしょうか?』
という懸念はある。あるが、
『まずは街に行ってみて確認するしかありませんね』
結論を出す。
こうしてレイラは、シェイナを抱いて、彼女の案内で街を目指して歩き始めた。
けれど、街への道は、ただただ開けた場所を貫いているだけでまったく舗装されておらず、やはり送電網や水道といったライフラインもまるで見当たらない。
このような場所は、少なくとも彼女の知る限りでは、どのような僻地であっても存在しないはずだった。
『いかなる事態が生じれば、このようなことになるのでしょう?』
彼女は戸惑いながらも淡々と歩く。
すると、彼女の目は、道の脇にあるものを捉えた。
それは明らかにかなりの期間に亘って放置されているのが一見しただけで分かる、作りの雑な<荷車>だった。いかにも<手作り>といった風情の。
「すいません。ちょっと待っていただけますか?」
シェイナにそう告げると、彼女も、
「うん、分かった…」
と応じてくれて、地面に下りる。
そんなシェイナが見守る中、レイラはその<ただのゴミ>と化した荷車を調べ始める。
『なるほど、車軸が折れて放置されたわけですか』
見れば確かに、レイラの上腕よりも太い丸太で作られた車軸が完全に折れている。こうなると、粗末な手作りの荷車など無理に持ち帰って修理してまで使おうとは思わなかったのだろう。車輪でさえ、それこそ太い木を輪切りにしただけのものだ。しかも、丁寧に加工されておらず形も真円に近いものではなく、パッと見でも歪なのが分かってしまう。
しかし、
『修理すれば、一時的な使用には耐えるでしょう』
レイラはそう判断し、すぐさま修理に掛かった。シェイナは、それを呆然と見ている。
けれどレイラは、自身のプラチナブロンドの髪を一本、手に取り、その先を地面に突き立てた。髪の先が小さな<ペグ>のようになっていたのだ。よく見ると彼女の髪の中に、それと同じようなものが何本か確認できる。しかもそれらは、他の髪よりも明らかに太く質感も異なっている。
そして彼女は、先を地面に突き立てて伸ばした自身の髪に、荷車から外した車軸の丸太を押し当てる。すると髪が、熱したナイフでバターを切るかのようにほとんど抵抗なく丸太にもぐりこんでいったのだった。
『身体生命を保護する』
ことだけなので、
『社会的な権利を保護・保障する』
という点については、やはり人間でなければできない。そうなると、当然、<行政>及び<法によってその正当性が裏打ちされた治安機構>に彼女を保護してもらうしかない。
しかし……
『しかし、この状況で果たして十全な機能を有した行政や治安機構が存在するのでしょうか?』
という懸念はある。あるが、
『まずは街に行ってみて確認するしかありませんね』
結論を出す。
こうしてレイラは、シェイナを抱いて、彼女の案内で街を目指して歩き始めた。
けれど、街への道は、ただただ開けた場所を貫いているだけでまったく舗装されておらず、やはり送電網や水道といったライフラインもまるで見当たらない。
このような場所は、少なくとも彼女の知る限りでは、どのような僻地であっても存在しないはずだった。
『いかなる事態が生じれば、このようなことになるのでしょう?』
彼女は戸惑いながらも淡々と歩く。
すると、彼女の目は、道の脇にあるものを捉えた。
それは明らかにかなりの期間に亘って放置されているのが一見しただけで分かる、作りの雑な<荷車>だった。いかにも<手作り>といった風情の。
「すいません。ちょっと待っていただけますか?」
シェイナにそう告げると、彼女も、
「うん、分かった…」
と応じてくれて、地面に下りる。
そんなシェイナが見守る中、レイラはその<ただのゴミ>と化した荷車を調べ始める。
『なるほど、車軸が折れて放置されたわけですか』
見れば確かに、レイラの上腕よりも太い丸太で作られた車軸が完全に折れている。こうなると、粗末な手作りの荷車など無理に持ち帰って修理してまで使おうとは思わなかったのだろう。車輪でさえ、それこそ太い木を輪切りにしただけのものだ。しかも、丁寧に加工されておらず形も真円に近いものではなく、パッと見でも歪なのが分かってしまう。
しかし、
『修理すれば、一時的な使用には耐えるでしょう』
レイラはそう判断し、すぐさま修理に掛かった。シェイナは、それを呆然と見ている。
けれどレイラは、自身のプラチナブロンドの髪を一本、手に取り、その先を地面に突き立てた。髪の先が小さな<ペグ>のようになっていたのだ。よく見ると彼女の髪の中に、それと同じようなものが何本か確認できる。しかもそれらは、他の髪よりも明らかに太く質感も異なっている。
そして彼女は、先を地面に突き立てて伸ばした自身の髪に、荷車から外した車軸の丸太を押し当てる。すると髪が、熱したナイフでバターを切るかのようにほとんど抵抗なく丸太にもぐりこんでいったのだった。
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