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人間じゃない
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真猫と日葵については、今のところは構わなくても大丈夫だろう。いつもと変わらない。
と思ったその時、真猫がいきなり、服を脱ぎだした。
「ちょ、ちょっと! なによ!?」
その様子に琴羽が慌てて声を上げる。まあ、無理もないか。
そんな琴羽に玲那は落ち着いて言葉を掛けた。
「真猫さんは服を着てるのが辛いんです。だから家ではいつも裸なんですよ」
「って、なによそれ!? そんなんでいいわけ? うちなんてお風呂からあがって部屋着を着てないだけで『だらしない恰好すんな!』って怒鳴られたのに!?」
「椎津さんの家ではそうだったんですね。でも、その辺りはそれぞれの家庭によって違います。真猫さんの場合は事情もあってこれですから、仕方ないんです」
「そんなのズルくない!? っても、だからって家で裸になりたい訳じゃないけどさ」
『自分は母親に煩く言われるのに、真猫はそうじゃない』
それがすごく不公平に感じられて、真猫を指差しながら琴羽は憤った。
「そんな甘やかすからこんな動物みたいなのになったんじゃないの!? みんな言ってるよ! 『子供は動物だから、人間じゃないから、厳しく躾けて人間にするんだ』って! そうしなかったからこいつはこんなんじゃないの!?」
琴羽の剣幕に、日葵が不安そうな顔をする。すると玲那は「大丈夫ですよ。日葵さんに怒ってるんじゃありませんから。私に任せておいてください」と日葵をなだめ、困惑した顔で自分を見詰める真猫にも静かに頷いてみせた。玲那が落ち着いているからか、日葵も真猫も安心した様子を見せる。
『先生に任せておいたら大丈夫なんだ』と思ってくれているのが分かる。
それを確認し、玲那は再び琴羽を見た。
「椎津さん。それは違います。子供は確かに未熟かもしれませんが、決して『人間じゃない』訳じゃありません。それは椎津さん自身が分かってる筈です。あなたは人間以外の何かですか?」
「そんなわけないでしょ!」
「ええ、そうですね。椎津さんはれっきとした人間です。『人間じゃない何かから人間になった』わけじゃありません。生まれた時から人間なんです。だから私は、椎津さんを私と同じ人間として扱います。私はその当たり前のことをするだけです」
「そんなきれいごと…!」
「子供を人間として扱うことが綺麗事ですか? 私はただ『現実に即した対応』をしているだけですよ。『子供も人間という現実』に」
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「ちょ、ちょっと! なによ!?」
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「ええ、そうですね。椎津さんはれっきとした人間です。『人間じゃない何かから人間になった』わけじゃありません。生まれた時から人間なんです。だから私は、椎津さんを私と同じ人間として扱います。私はその当たり前のことをするだけです」
「そんなきれいごと…!」
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