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体の発育と本人の認識のズレ

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真猫まなは、一年生相当ということで在学している。そして他の一年生と同じように、ようやく五時間目の授業まで出られるようになっていた。と言ってももちろん実際にはにこやか学級(=特別支援学級)にいて、しかも学力という点での向上はほとんど見られないことから専用のカリキュラムをこなしているので、内容までは他の一年生と同じではない。なにしろいまだに文字さえ書けないのだから。

体育も一応は行う。猫を思わせるしなやかな体つきをしていることもあり運動能力は高いと思われるものの、ルールが理解できないので<競技>の類はできそうになかった。跳び箱は上手く誘導してやればするものの、<手をついて跳び越える>というのが理解できないらしく、ただ跳び箱を跳び越えてしまうだけだった。

『空中姿勢はとても美しいから身体能力は確実に高いはずですし、上手くいかせれば一流のアスリートにもなれたかもしれませんが…』

と、玲那が少し残念そうにはしていた。とは言え、できないことを高望みしても始まらないが。今の彼女に<競技>をやらせようとするのは、ペットに芸を教えようとするのと似たようなものだろう。

一方、体と言えば、彼女の体は第二次性徴が進んでいることも事実である。乳房と言うにはまだまだ未熟でも、明らかに胸が膨らみ始めている。

なのに真猫まなは、自分のその体の変化をまったく意識していないようだった。

だから、きちんと指示してあげないと平気で男子の前でも服を脱ぎ始めたりしてしまう。

『これも、真猫まなさんに理解してもらうのは無理でしょうね。<決められた場所で着替える>ことができるようになっただけでも立派なものだと言えます』

それについても、最初は服そのものを着ようとしなかったのだから、格段の進歩と言っていいだろう。

頭ごなしに<命令>するのではなくて、彼女の気をひいて誘導するという形を根気よく行った玲那の努力の賜物だった。これが他の教員だと頭ごなしに怒鳴りつけて従わせようとしていたかもしれない。にこやか学級を担当している教員はまだその辺りについて理解があっても、それ以外の教員の理解はまだまだ十分でないと思われた。

実際、体育の授業中に玲那が急に催してトイレに行っている間、ぼんやりと玲那が戻るのを待っていた真猫まな、他のクラスの担任教師が、

「こら! 何をぼっとしてる!!」

と、事情も訊かずに怒鳴りつけたこともあった。それ以来、真猫まなはその教師を見る度に不安そうにして落ち着きがなくなり、玲那の指示にも従わなくなった。故に今では、玲那もその教師を意図的に避けていたりしたのだった。

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