獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

獣人のよろずやさん

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こうして私は、晴れて少佐と結ばれました。子供はまだですけど、ちゃんと愛されています。

それもあって、よろずやの建物の脇に新居を用意してもらって、二人で暮らし始めました。

「む~……!」

メイミィとラレアトは揃って頬を膨らましますけど、ごめんね。私のパートナーは少佐なんだ。二人は私にとっては妹みたいなものだから。

でも、そうですね。二人にとっても『大好きな姉が取られた』ってことだとしても怒りたくもなりますね。

だけど私も二人のことは好きだよ。大切にしたい。

そんな風に思いつつ、よろずやにも新しい従業員が増えて、ちゃんとシフトが組めるようになりました。休日が用意できるようになったんです。

なにしろお客もさらに増えて、忙しくなってきましたから。バックヤードで商品管理をしていたラレアトにも<部下>ができました。すると彼女は、熱心に指導してくれるようになって。

メイミィもトームもフロイも、売り場担当の後輩にちゃんと仕事を教えてくれます。どんどん、私と少佐と伍長ばかりが張り付いてなくても仕事が回るようになってきたんです。

しかも、私達の店とは反対側に、<二号店>までできて。こちらは、<食堂>も兼ねたそれでした。祭の屋台で慣れた者達が作ったんです。これで、今まで少し遠かった人らも気軽によろずやに行けるように。

ああ…本当にいいですね。皆が力を合わせて社会を築きつつあります。

もちろん、ゴヘノヘの脅威そのものは去ったわけじゃありませんし、獣蟲じゅうちゅうだって現れます。決してただただ安心してのんびりしてられるだけの世界じゃない。

けれど、そういう世界でだって幸せは掴めるんです。自分の力で。自分達の力でね。



さらに、次の祭に向けての準備が始まる頃、私にも変化が。

実は、お腹に少佐の赤ちゃんを迎えることができたんです。

必ずしも安穏としてられる世界でなくても、生まれてきたことを後悔はさせたくありません。

あの<不定形な何か>については何一つ分かっていません。でも、しっかりと間合いを取ることを忘れなければ、実はそんなに恐ろしい相手でもないことは分かりました。ゴヘノヘや獣蟲じゅうちゅうよりはよっぽど危険度が低い。

最初に遭遇した時にはあまりに異様な存在だったことで対処を誤ってしまったけれど、いろいろと分かってくればそんなものだったということですね。

それに、私は今、幸せです。だって愛する人達と一緒に力を合わせて生きていけてるんですから。

この、

<獣人のよろずやさん>

で。







~物語は終わり、人生は続く~



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