獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
403 / 404
第四部

いいお祭であり続けるためには

しおりを挟む
この<いいお祭>がいいお祭であり続けるためには、悪意にまみれてはいけないと思います。

悪意とまでは言わないとしてもいろいろ思惑のようなもので左右されるようなものになっては本来の志が失われてしまうかもしれない。

これはあくまで、ゴヘノヘの驚異に負けまいとする彼ら彼女らの決意の表れですから、

『神仏に責任を擦り付けて誰かを虐げる』

ものになってはいけないんです。

私達はそうならないように見守っていかなければ。

また、<生贄>のようなものを要求するような祭にもしない。それが意味のないものであることを確かめようもなかった頃には仕方がなかったのだとしても、意味がないことが分かっている以上は生贄の習慣も作らないようにしなければ。

とにかく、神仏が望んでいるということにして害意を正当化しては歯止めが効かなくなることは地球人社会の歴史でもう分かっているんです。なのにそれを繰り返す必要もないでしょう。ただただ、士気を高めゴヘノヘの脅威に備えるという意識を保つためのそれであることを心掛けなければと思います。



翌朝、目が覚めると、

「おはよう。お疲れ様」

少佐が私を労ってくれました。私は体を起こして、彼に顔を寄せていきます。そんな私を彼も避けたりしなくて……

そして、軽く唇を触れさせたんです。

本当に、自然に、そうするのが当たり前のようにできてしまったんです。

二度目の祭を無事に成功させて、私も少佐も肩の荷が下りたような気分になっていました。だからもう、お互いの気持ちを抑える必要がなくなっていた。

仕事をやり遂げた満足感と解放感とで、阻むものがなくなっていたんでしょうか。

そうですね。私と少佐は、もう、お互いの気持ちは確かめ合っていました。私は元々少佐を愛していましたし、少佐も、久利生くりう家の縛りがなくなっていたことで遠慮する必要はなくなっていました。ただ、二号機の製造と二度目の祭の準備という<仕事>があったから、そちらを優先していただけ。それが終わったんですから、それこそもう誰憚ることなくお互いの気持ちに正直になればいい。

だから、

「僕は、ビアンカを正式にパートナーにしようと思う」

メイミィと、レータを連れたトームが出勤してきて、フロイも仕事を終えて、ラレアトも朝の用意を済ませて、伍長と震電とクレアが顔を出したところで、少佐がそう告げてくれました。けれど伍長は、

「何をいまさら。お前らがパートナーじゃねえなんてもう誰も思ってねえよ」

呆れたように言いました。メイミィとラレアトも、ちょっと不満げですけど頷いてくれたんです。

トームとフロイはただただ笑顔で。

私は、自分の顔がすごく熱くなるのを感じたのでした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...