獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

ダイガとブグル

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そして祭の準備もいよいよ整いました。<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>と<ゴヘノヘ神輿>が、会場に用意されます。

三日間、祭が開かれ、また、猪人ししじんによる、<喧嘩神輿の乗り手>を決めるためのトーナメントが行われていました。前回はダイガが対ゴヘノヘ用決戦兵器に、ブオゴがゴヘノヘ神輿に乗り込んで気勢を発しましたが、さて、今回はどうなんでしょう。

と、なんとブオゴが二回戦で敗退してしまいました。

「クソッ!!」

膝を着いたまま悔しそうに舞台の床を叩くブオゴに、

「しっかりしろよ! だらしねえ!!」

伍長が声を掛けましたが、それはあくまでブオゴに対して檄を飛ばしているだけなのは分かります。本心で蔑んでるわけじゃない。事実、伍長自身が悔しそうだったんです。自分がライバルと認めた相手の不甲斐ない結果に。

後に伍長は口にしました。

「俺がもっと鍛えてやれば勝てたかもしれねえのによ」

と。震電を育てていてブオゴの相手ができなかったことを悔やんでいたんです。けれどそれは違います。震電を育てるのも大事な役割なんです。

それに、ブオゴも実は猪人ししじんとしてみればもういい歳。パートナーもできて子供もできて、肉体的にはピークを過ぎていると言えるでしょう。つまり、

<世代交代>

が進んでいるんです。

もしかすると、一昨年くらいにこのゴヘノヘ祭があればブオゴが優勝していたかもしれない。けれど、一昨年にはゴヘノヘ祭はなかった。残念ですけど、そういうものですよね。

対して、去年優勝したダイガは順調に勝ち上がり、決勝戦へと進みました。

その決勝戦の相手の名は、ブグル。前回のゴヘノヘの襲撃の際に亡くなった猪人ししじんの戦士の息子だそうです。そして去年のゴヘノヘ祭の際には予選敗退という結果に終わり、今年はそれこそその雪辱を果たすために自らを徹底的に鍛えてきたとのこと。

ゴヘノヘに対しては強い因縁があるということですね。

そして決勝戦。ダイガとブグルは共に死力を尽くして競い合い、結果、

「勝者! ブグル!!」

ブグルの強烈な頭突きに一瞬とはいえダイガは意識を失い、そこで勝負がついてしまった。意識を失って無防備になってしまえば後はとどめを刺されるのを待つだけですから。

こうしてブグルが見事に雪辱を果たし、<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の乗り手となりました。彼にしてみれば、父親の仇であるゴヘノヘを模したゴヘノヘ神輿には乗りたくなかったでしょうし、そういう意味でも気合いが入ったんでしょうね。

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