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第四部
軍人として敵を撃ったのは
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『自分の能力では支えきれない相手に対しては、早々に距離を置くべき』
だからこそ震電は伍長に預けられました。
『自力で生きていけない者を死に追いやる』
というのはここでもありましたけど、だからといって、
『自力で生きていけない者をイジメて鬱憤を晴らす』
なんてのは基本的にありませんでした。でも、地球人社会で『自力で生きていけない者を死に追いやる』という考えを持つ人の多くが、自分の鬱憤の捌け口としてそれを利用しようとしてるだけでしたよね? その証拠に、自分が関わるわけでもない相手までネットを通して攻撃していましたよね?
自分が直接関わる相手じゃないんですよ? 苦労を背負い込むわけでもない。なのになんでわざわざ攻撃するんですか? 何が目的なんですか?
『自分が気に入らない相手を社会から排除する』
ためですか?
『自力で生きていけないような奴を生かしておいては社会が疲弊するだけだ!』
と言いたいんですか? でもそんなこと、あなたに本当に分かるんですか? 社会の仕組みを動かす側に回るだけの能力もないあなたに? たとえ政治家になれたとしても、あなた一人の力で何ができるんですか? あなたの考えに賛同できない者は排除するのが正しいとでも思ってるんですか? それは独裁とどう違うんですか?
かつて地球において<強度近視>の方が<眼鏡>等の発明により<致命的なハンデ>ではなくなったということがありましたよね?
そのようにして、
『状況が変わればハンデはハンデではなくなる』
ということが現にありますし、私達がイオにいた頃にはもう、ほとんどの遺伝子疾患すら根治できるようになっていました。四肢欠損さえ、再生医療の進歩により完全に元通りになりましたし、場合によっては高性能な義体に換装することもできたんです。
そういうものです。
その、
<状況を切り替えていく努力>
を、どのような権限があって否定するんですか? 自身の個人的な主観がこの世のすべてだとでも思っているのですか?
どこかの誰かの家族の命の価値を、なぜあなたが決められると考えられるんですか?
私は何度も何度も、それを考えます。私の勝手な主観で誰かの命の価値を決めていいのか?と。そして毎回、答は出るんです。
『いいわけがない』
と。軍人として敵を撃ったのは、
『価値がないから』
ではありません。
『そうするしか自分や仲間の命を守る手段がなかった』
からです。そこに『命の価値云々』などという戯言は入り込む余地もなかった。
それだけです。
だからこそ震電は伍長に預けられました。
『自力で生きていけない者を死に追いやる』
というのはここでもありましたけど、だからといって、
『自力で生きていけない者をイジメて鬱憤を晴らす』
なんてのは基本的にありませんでした。でも、地球人社会で『自力で生きていけない者を死に追いやる』という考えを持つ人の多くが、自分の鬱憤の捌け口としてそれを利用しようとしてるだけでしたよね? その証拠に、自分が関わるわけでもない相手までネットを通して攻撃していましたよね?
自分が直接関わる相手じゃないんですよ? 苦労を背負い込むわけでもない。なのになんでわざわざ攻撃するんですか? 何が目的なんですか?
『自分が気に入らない相手を社会から排除する』
ためですか?
『自力で生きていけないような奴を生かしておいては社会が疲弊するだけだ!』
と言いたいんですか? でもそんなこと、あなたに本当に分かるんですか? 社会の仕組みを動かす側に回るだけの能力もないあなたに? たとえ政治家になれたとしても、あなた一人の力で何ができるんですか? あなたの考えに賛同できない者は排除するのが正しいとでも思ってるんですか? それは独裁とどう違うんですか?
かつて地球において<強度近視>の方が<眼鏡>等の発明により<致命的なハンデ>ではなくなったということがありましたよね?
そのようにして、
『状況が変わればハンデはハンデではなくなる』
ということが現にありますし、私達がイオにいた頃にはもう、ほとんどの遺伝子疾患すら根治できるようになっていました。四肢欠損さえ、再生医療の進歩により完全に元通りになりましたし、場合によっては高性能な義体に換装することもできたんです。
そういうものです。
その、
<状況を切り替えていく努力>
を、どのような権限があって否定するんですか? 自身の個人的な主観がこの世のすべてだとでも思っているのですか?
どこかの誰かの家族の命の価値を、なぜあなたが決められると考えられるんですか?
私は何度も何度も、それを考えます。私の勝手な主観で誰かの命の価値を決めていいのか?と。そして毎回、答は出るんです。
『いいわけがない』
と。軍人として敵を撃ったのは、
『価値がないから』
ではありません。
『そうするしか自分や仲間の命を守る手段がなかった』
からです。そこに『命の価値云々』などという戯言は入り込む余地もなかった。
それだけです。
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