獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

自分を守ろうとする時だけ都合よく

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人間は、フィクションの中の<悪役>のようにただ愚かなだけとは限りません。何らかの理由があり背景があるからこそそう振る舞っているという場合も少なくないんです。

だったら、その<理由>や<背景>をそもそも生じさせないように対処するのは当然じゃないんですか? ましてや『知能が高い』とおっしゃるのでしたら。その努力もせず放置するのは、『知能が高い』人の在り方なのですか?

また、伍長も言います。

「俺は親だからこそ説教臭いことも言ったりするだろうな。けどよ、親なら子供に教えなきゃいけねえことってあんだろうが? それを『説教臭い』だとか、何様のつもりだ? お前はそれを親から言われたことはねえのかよ? 『こんなこと言われたなあ』って思うことはねえのかよ? 親から言われたんならちゃんとやれよ。言われたことねえってんなら、そりゃそいつの親が怠けてたってえことじゃねえか。そうだろ?」

言われてみればそうですね。私の両親は、口を開けば、

「親に迷惑を掛けるな」

「子供のクセに」

「誰のおかげで生きられてると思ってるんだ」

「ちゃんとしろ」

とは言いましたけど、そんな細切れの一言二言でちゃんとできてると自分で思うんでしょうか? それを言ってる両親自身が、

『子供を生む時に子供自身から承諾をもらった事実なんてない』

ってことさえ理解できてないんですよ? ぜんぜん『ちゃんと』してないですよね。

子供が納得できるような説明もできないなんて、それは<知能の高い人の振る舞い>なんですか?

自分が満足に説明もできないのを棚に上げて偉そうにするだけの評論家とかコメンテーターとか政治家とか、あなたは信頼し尊敬できるんですか?

ましてやちょっと都合が悪いことがあると『親だって人間だから』と言い訳するのに、

『親のことは無条件に尊敬しろ信頼しろ』

って、よく言えますよね?

<ただの人間>っていうことは失敗もするし間違ったことを言ったりもするって話ですよね? ほんと自分を守ろうとする時だけ都合よく<親>と<人間>ってのを使い分けるんですから、性質が悪い。

その上、自分の悪行の責任を神仏だったり子供だったりどこかの誰かだったり社会だったりに責任を擦り付けて逃げようとする。

信頼されたり尊敬されたりしたいなら、そんな態度はやめればいいじゃないですか。どうしてその程度のこともできないんです?

だけどそれらは、あくまで親が地球人だった場合。ここの獣人達にはまだそういうのが根付いてないんです。つまりこんなことを言ってるのは、結局は私自身に対する戒めですね。

私自身が親になった時に備えてるんです。

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