獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

建造作業

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地球人類である私は、獣人達に比べると身体能力が圧倒的に劣ります。だから、<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の建造作業なんていう、ひたすら作業者のフィジカル頼みの現場では、ホントに子供より非力ですよ。

そんな私が、彼ら彼女らから信頼されていなければ、どうなると思います? 

『何の役にも立たないクセに偉そうな顔してあれこれ口出ししてくるだけ』

みたいに思われませんか? 彼ら彼女らから信頼されるには、きちんと彼ら彼女らを敬い労わることだと思うんですが?

こう言うと今度は、

『相手を付け上がらせるだけだ!』

とか難癖をつけてくる人もいるでしょうけど、そうですね。『あなたと同じ地球人には』そういう人達もいるでしょうね。でも、ここの獣人達はそんなに浅ましい人達じゃありませんよ? 実際にこうして交流している私達の実感とは違う人達を根拠にできると本気で思ってるんですか?

実際に彼ら彼女らはとても真面目に働いてくれてますよ。山猫人ねこじんは確かに私の感覚からすると不真面目にも思えても、『狡く』はないですね。労働に対する捉え方が大きく違ってるだけです。

そんな山猫人ねこじん達だって、ちゃんと気が向けばとても有能です。あくまで『気が向けば』ですが。加えて、働いた分だけしか見返りは求めませんしね。働いてない分までは要求してきません。

なお、貨幣制度がないここでの<報酬>は、屋台の食事食べ放題というだけ。それ以外には、正直なところ、この場の雰囲気を楽しむというくらいでしょうか。加えて、『ゴヘノヘと立ち向かうために皆で力を合わせる』という一体感。だから山猫人ねこじん達も、この場の雰囲気を楽しみたいから手伝ってくれるというのもありますね。

食事については、軽くつまんでいくだけだったり。

これはあの軽薄なニャルソも同じ。高所で縄を掛けたりするのを、彼も手伝ってくれました。それはあくまで『私にモーションを掛けるついで』という一面もありつつも。

私は彼に対しては冷淡な態度も見せますけど、それはあくまで彼の気持ちを受け入れるつもりはないという意思表示に過ぎません。彼の存在そのものを否定するつもりはないんです。

そんな諸々もありながらも、<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の建造は順調に進んでいきます。

ザフリをリーダーとして時間も手間もかけて行った設計は、こうして建造している段階でも<力強さ>という印象で伝わってきます。

そのザフリも、現場で正しく設計通りに組み上げられているかを確認していますね。その姿はとても立派です。

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