獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
375 / 404
第四部

二十年ばかり定職に就かず

しおりを挟む
カレッジを卒業後、早々に家を出て看護師になった私でしたが、両親はそんな私に対して、

「看護師みたいな低俗な仕事をさせるためにカレッジに通わせたんじゃない」

とことあるごとに口にして、とにかく苛立たせました。だから先にも触れたとおり、私の養育にかかってであろう金額に熨斗のしを付けて返済してやったんです。

それは看護師時代だけでは終わらず、軍に入隊した以降まで掛かりましたけど。

実を言うと、看護師を辞めてから軍に入るまで二十年ばかり定職に就かずふらふらしていた時期もあったんですけどね。

老化抑制技術の進歩により、地球人類の<健康寿命>は百五十年を超えていました。健康寿命は事実上の<老化抑制処置の効果時間>でもありましたから、百五十年は、健康に働けるわけです。なので、いくつもの職を経験するのは普通のことでした。私のように看護師をした後に、なんと女優になった人もいます。私は芸能界には興味はなかったので目指すことはありませんでしたが、スカウトされたこともあったりしたんですよね。自慢じゃありませんけど。

ただ、あまりに長い人生をどう過ごせばいいのか分からなくなって、いろいろ迷ってた時期であったことは間違いないと思います。看護師をしていた時も、

『これを後、百二十年も続けるのか……』

って考えたら眩暈がしたり。で、耐えられなくなって看護師を辞めて、まあ、<自分探し>みたいなことをしてたわけです。その間については、両親に知られたらそれこそ何を言われるか分からなかったので、ずっと看護師をしてるってことにしてましたけど。

でも家に帰ったりするとそれがバレるので、あちこちを転々としてましたね。スペースコロニーや、月や、火星とかを。

だけど二十年も経つと今度はそんなウジウジした自分が嫌になって、それこそもう半ばヤケクソで軍に志願したんです。自分を変えたくて。

訓練中も何度も『もう辞めよう』『明日辞めよう』『今すぐ脱走しよう』と考えたりしましたが、その度に私を嘲る両親の顔が浮かんで、『あれよりはマシ』と思い直し、晴れて正規の軍人になれたわけです。さすがに自分自身も鍛えられた気がしてましたし。

で、軍人になってしばらくして少佐と出逢って、一目で恋に落ちて、そこから先は少佐と一緒にいたくて続けてた感じですね。その間、テロリストとの戦闘や紛争地帯への派兵も経験し、何度も死ぬ思いもして、実際、死んでもおかしくない負傷もして、その時に少佐に応急処置してもらったりして、一層、少佐への想いを募らせたりして……

……あれ? 話がメチャクチャ逸れてますね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】番が見ているのでさようなら

堀 和三盆
恋愛
 その視線に気が付いたのはいつ頃のことだっただろう。  焦がれるような。縋るような。睨みつけるような。  どこかから注がれる――番からのその視線。  俺は猫の獣人だ。  そして、その見た目の良さから獣人だけでなく人間からだってしょっちゅう告白をされる。いわゆるモテモテってやつだ。  だから女に困ったことはないし、生涯をたった一人に縛られるなんてバカみてえ。そんな風に思っていた。  なのに。  ある日、彼女の一人とのデート中にどこからかその視線を向けられた。正直、信じられなかった。急に体中が熱くなり、自分が興奮しているのが分かった。  しかし、感じるのは常に視線のみ。  コチラを見るだけで一向に姿を見せない番を無視し、俺は彼女達との逢瀬を楽しんだ――というよりは見せつけた。  ……そうすることで番からの視線に変化が起きるから。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

処理中です...