獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

猫以下の動物

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私が自分の両親を尊敬できなかったのは、あの人達の傍にいたくなかったのは、二人が私を人間と見做してくれなかったからだというのがすごく分かります。二人にとって私は、自分達の社会的な体裁を保つための<道具>でしかなかった。

私をカレッジに通わせたのだって、結局は、

『自分達は娘をしっかりとカレッジにまで通わせることができる、立派な親である』

と見せかけたかっただけなのが分かるんです。私のことを『愛してる』と言いながらも二人が本当に愛しているのは、

<娘に愛情を注いでいる自分自身>

でしかないことも分かってしまいます。そして私は、そんな二人が嫌いでした。その一方で、以前にも触れた通り、猫にとっては良い飼い主でしたから、決して悪人ではなかったんです。ただ、<人の親>には向いていないというだけで。

そんな二人も、老化抑制技術のおかげで、私が軍に入隊した頃でも、肉体的にはまだ十分に若かった。老化抑制技術が実用化される以前の人間でいえば三十台前半くらいのそれ相当だったはずですから、その気になりさえすれば、私がコーネリアス号や少佐達と一緒に行方不明になった後でまた子供を作ることもできたでしょう。

ただ、あの人達は子供は好きじゃなかったことは確かなので、もしかすると『もうこりごり』とばかりに猫の飼育にいそしんでるのかもしれません。むしろそうであってほしい。私と同じ思いをする弟妹などいてほしくない。

本気でそう思います。

前にも言ったかもしれませんが、フィクションなどの場合はこういうことがあっても、

『娘には伝わっていなかったものの本当は両親は娘のことをとても愛していた』

的な展開があったりするでしょうけど、そんな<お涙頂戴な展開>なんて、そうそうありませんよ? あの人達のことを三十年ばかり見てきた私じゃない、あの人達の外面しか知らない赤の他人がなんで分かったようなことが言えるんです? 
あの人達の本性を嫌というほど見てきた私を差し置いて。

でも、伍長が震電をしっかりと人間として敬って尊重して接してることは、自分の両親と比べるからこそ分かります。あの人達がしなかったことこそを伍長はしてるんですから。

何度でも言います。私の両親にとって私は、<猫以下の動物>でしかなかったんです。猫のように愛情を注ぐ相手ではなくて、<道具>でしかなかったんです。いわば<家畜>。そしてそれを正しいと本気で思っていた。

あの二人と比べればこそ、分かることがあるんです。

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