獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

それぞれができることをする

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こうして設計だけでも冬を超え春を迎えるほどの時間を掛けて、徹底的に検証を重ね、やがて全体像が出来上がってきました。

シルエットは先の<対ゴヘノヘ用決戦兵器>を踏襲しつつも、その構造そのものはまったくの別物になりました。強度はおそらく倍以上、重心も下げて安定性を増し、さらに武装も確実に動作するように何度も試作を重ねて作り上げた設計図は、確かに地球人類が作るそれに比べれば拙い印象もありつつ、満足な文明も技術もないここで作り上げたものとしては、十分以上のそれだという印象がありましたね。

そしていよいよ、その設計図を基に<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の建造に取り掛かります。

これもまた、<ゴヘノヘ神輿>を建造した時と同じく、やぐらを組んでからになりますが。

「いよいよだね」

<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の建造に着手することになり、それぞれの集落のおさを招いてその開始を見届けてもらうため、少佐も参加していました。

さらに、伍長も、震電をおんぶ紐を使って背負って。

震電は、あまり『歩く』ということをしませんでした。彼女にとっては歩くことで素早く移動するのは、周囲の状況を確認するのが間に合わなくなるから、普段は基本的にハイハイで移動します。ましてやあまりよく知らない場所に来た時には危険しかありません。

今の彼女には過ぎた冒険なんです。

実際、地面に下ろしても、彼女はその場から動こうとはせず、しきりに頭を動かして耳を向け、周囲の状況を掴もうとするかのような様子を見せるだけでした。自分が安全だと確認した家の中ならひたすら動き回ったりする半面、安全が確認できていない場所ではまずそれを確かめようとするということですね。とても利口な子です。さらには、

「パパ。こわい!」

状況が掴みきれず安全を確かめられないとなるとちゃんとそう告げて、伍長の庇護を求めます。自分にできることできないことをもうすでにわきまえてきているんでしょうね。

「おう、俺はここにいる。心配要らねえ」

伍長は面倒臭がることなく震電を抱きかかえ、彼女を安心させます。それが絶大な信頼感となり、震電は伍長をこの世の誰よりも尊敬しているようでした。

残念ながらクレアではそこまでではないようですけど、クレアも別に気にしていないようです。彼女自身、伍長をとても信頼していることで、震電の母親役というよりは、<お姉さん>的な存在になっているみたいですね。

でも、それでいいんだと思います。

『それぞれができることをする』

これもまた、家族の在り方なのでしょうから。

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