獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

悪逆非道な異生物

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そうです。決して<悪人>でもない人が敵対してくるということが、人間社会では起こります。それは結局、<背負ってるものの違い><立場の違い>によって生じることですよね? 戦争なんていうものは、それの最たる事例ですよね?

殺さなければ殺される。だけど相手の兵士も、別に悪逆非道な異生物というわけでもない。

<家族を愛し友人を愛しそれらを守ろうとして戦っている人間>

だったりもしますよね?

伍長と私も、背負ってるものや立場が違えば敵同士だった可能性もあったでしょう。

けれど彼は今、<震電の父親>として私の前にいます。

「う~、あう~…!」

と、何かを訴えかけようとしている震電を抱き上げ、

「どうした? 俺はここにいるぜ。安心しな」

そう穏やかに話し掛けながらあたたかい目を彼女に向けている彼が。彼の本質そのものは変わっていないんでしょうけど、デリカシーがなくてガサツで粗暴な印象しかなかった彼も、<親>になるとこんなにも変わるものなんでしょうか。

リータの時から確かにその片鱗はありましたが。

それと合わせて、彼の震電への接し方を見ていると、かつてハンデを抱えた子供が生まれると、

『どうせ生きていけないんだから最初から死なせればいい』

的なことが言われていたというのが、結局、

『親が、ハンデを持たない子供と自分の子供を比較して劣等感を抱き、無理矢理ハンデを持たない子と同じ様な生き方をさせようとしてそれで状況を拗れさせたのでは?』

という印象しか受けないですね。野生の生き物は、自身の能力というものをわきまえています。人間の幼児ほどの知能もない動物も、視力を持たない動物も、己の能力に合わせた生き方をしているからこそ生きていけるんじゃないんですか?

ハンデを持たない者を基準にして作られた社会の中で、無理にそちらに合わせた生き方を、『頑張れば同じことができる!』と盲信してやらせようとするから齟齬が出るんだと感じました。

確かにそれは、医学の進歩で先天的なハンデも後天的なハンデも克服した今の地球人類の一人である私の傲慢な考えなのかもしれませんが、本人の能力に見合った身の丈に合った生き方をすれば無理なく生きられるところを親の虚栄心のために能力以上のことを強いるというのは、それはおかしくないですか?

もちろん、本人が望んで困難に挑戦するというのであればそれは応援すればいいでしょうけど、でも、親の方がそれを誘導しているとしたら、これまたどうなんでしょうね。

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