獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

自分だけが好き勝手できる社会なんて

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私が、

『両親の老後の面倒なんて見たくない』

と口にすると、

『親不孝者!!』

と罵る人がいました。けれど、そうやって誰かを罵るという礼儀礼節に反した振る舞いをするというのは、自分が親からちゃんと礼儀礼節について教わっていない、もしくは我が子に礼儀礼節を教えることもできないような親だったと、世間に公言するようなもので、それこそ<親不孝>というものなんじゃないですか?

こう言うと、

『自分の気持ちに正直になる方が健全だ!』

とか言う人もいましたけど、冷静に考えてみてください。犯罪者やテロリストは、

『自分の気持ちに正直になった結果、他者を害する存在になった』

のではないんですか? そこまででなくても、店員や駅員に暴言を吐いたり暴力をふるったりしてる人は、『自分の気持ちに正直になった』からこそそんなことをしてるんじゃないんですか?

そして、ネット上で、自身の発言に噛み付いてくる人も、『自分の気持ちに正直になった』からそんなことをしてるんじゃないんですか? 違うんですか? 違うというなら、どう違うんですか? 

『自分の気持ちに正直になる』

なんて、確かに耳に心地いい言葉でしょう。それが正しいと思いたくもなるでしょう。でも実際には、無駄に諍いを生む原因にしかなりませんよ。だって、自分だけが一方的に『自分の気持ちに正直に』なれるわけじゃないんですから。他の人も同じように『自分の気持ちに正直に』なれなきゃおかしいでしょう? どうして自分だけが『自分の気持ちに正直に』なれて、他の人は我慢するのが当然だと思えるんですか? そんな自分にばっかり都合のいい世界なんて存在するわけないじゃないですか。なんでそんなことも分からないんですか?

こう言うと、

『厳しいことを言う奴がいなくなれば、人間社会はメチャクチャになる!』

とか言う人も出てくるでしょうけど、え? おかしいですよね? 誰もが相手を労わり気遣うことができるようになって、なんで社会が滅茶苦茶になるんです? それってただ自分が好き勝手したいからそう言ってるだけですよね?

『誰もが相手を労わり気遣うことができるような社会なんて、いったいどこにあるんだよ!?』

とか言うかもしれませんけど、そうですね。あなたがそんな風におっしゃってる限りはそんな社会は生まれないでしょう。だってそれをおっしゃってるあなたがそんな社会の成立を妨害してるんですから。

とにかく、自分だけが好き勝手できる社会も存在しないんですよ。自分が好き勝手しようとするなら、他の人だって好き勝手して当然なんです。

だからお聴きします。

『自分だけが好き勝手できる社会なんて、どこに存在するんですか?』

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