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第四部
親のエゴ
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服を着てハイハイをする震電の姿は、本当に<瓜坊>そのものですね。底抜けに可愛いと思います。
けれど、もうすでに可愛いだけじゃない強かさも感じさせる。手を触覚のように使って周囲の状況を確認し、そしてまるで家の中をマッピングするかのように延々と動き回っていました。彼女にとってそれは、生きるために必要な情報。視覚には頼れない分、それ以外の感覚で、自分にとって安全な場所を自ら確かめていってるんでしょう。
そんな震電を、伍長は誇らしげに見ます。
「見ろ、ビア樽。こいつの姿を。震電は自分にできることで自分を生かすための環境を選び取ろうとしてるんだ。目が見える奴とは違う形で世界を見てんだよ。それを邪魔する奴は俺がぶちのめす。俺はこいつの親だ。こいつに危害を加える奴は俺の<敵>だ。それが何者だろうと許さん」
言ってることは相変わらず無茶苦茶ですが、言いたいことは分かる気がします。もっとも、端的に言うならそれは、
<親のエゴ>
です。
『自分の子供が幸せに生きていくためなら手段を選ばない』
という。けれど、自分が親になると選択した以上は、
『子供の幸せを最優先に考える』
のは、まっとうな親なら当然のことのはずです。私の両親のように、自分の子供を<体裁を整えるための道具>に使うのよりはよっぽどまっとうな。
そもそも、生きるということ自体が<エゴ>そのもののはずなんです。自分が生きるために他の命をいただくなんて、それがエゴでないなら何なんですか?
ただ、せめて同じ<人間>同士の場合は、互いに傷付け合うようなことはしない方がいいんじゃないでしょうか。そんなことをしていたらそれは大きな損失だと思います。なにより<幸せ>になれない。
これまでにも何度か言ってきたと思いますが、誰かを傷付けて自分だけが幸せになろうなんて、そんなの、傷付けられた側が許してくれるわけないじゃないですか。当たり前ですよね? なのにどうして自分の子供なら傷付けていいとか思えるんですか? そんなことをしたら子供に恨まれて当然じゃないんですか?
子供に恨まれて、それで幸せになろうとか、ムシが良すぎませんか? だったら、同じ<エゴ>でも、誰かを幸せにするためのそれの方が建設的だと思いませんか?
今なお、それを理解できない人もいるらしいですけど、そんな自分の振る舞いが原因で周りから疎まれて不幸を引き寄せているのに、自分が原因だと認めようとしない。いつだって悪いのは自分以外の誰かで、自分はただただ被害者だと思ってる。
ホント、何なんでしょうね。
けれど、もうすでに可愛いだけじゃない強かさも感じさせる。手を触覚のように使って周囲の状況を確認し、そしてまるで家の中をマッピングするかのように延々と動き回っていました。彼女にとってそれは、生きるために必要な情報。視覚には頼れない分、それ以外の感覚で、自分にとって安全な場所を自ら確かめていってるんでしょう。
そんな震電を、伍長は誇らしげに見ます。
「見ろ、ビア樽。こいつの姿を。震電は自分にできることで自分を生かすための環境を選び取ろうとしてるんだ。目が見える奴とは違う形で世界を見てんだよ。それを邪魔する奴は俺がぶちのめす。俺はこいつの親だ。こいつに危害を加える奴は俺の<敵>だ。それが何者だろうと許さん」
言ってることは相変わらず無茶苦茶ですが、言いたいことは分かる気がします。もっとも、端的に言うならそれは、
<親のエゴ>
です。
『自分の子供が幸せに生きていくためなら手段を選ばない』
という。けれど、自分が親になると選択した以上は、
『子供の幸せを最優先に考える』
のは、まっとうな親なら当然のことのはずです。私の両親のように、自分の子供を<体裁を整えるための道具>に使うのよりはよっぽどまっとうな。
そもそも、生きるということ自体が<エゴ>そのもののはずなんです。自分が生きるために他の命をいただくなんて、それがエゴでないなら何なんですか?
ただ、せめて同じ<人間>同士の場合は、互いに傷付け合うようなことはしない方がいいんじゃないでしょうか。そんなことをしていたらそれは大きな損失だと思います。なにより<幸せ>になれない。
これまでにも何度か言ってきたと思いますが、誰かを傷付けて自分だけが幸せになろうなんて、そんなの、傷付けられた側が許してくれるわけないじゃないですか。当たり前ですよね? なのにどうして自分の子供なら傷付けていいとか思えるんですか? そんなことをしたら子供に恨まれて当然じゃないんですか?
子供に恨まれて、それで幸せになろうとか、ムシが良すぎませんか? だったら、同じ<エゴ>でも、誰かを幸せにするためのそれの方が建設的だと思いませんか?
今なお、それを理解できない人もいるらしいですけど、そんな自分の振る舞いが原因で周りから疎まれて不幸を引き寄せているのに、自分が原因だと認めようとしない。いつだって悪いのは自分以外の誰かで、自分はただただ被害者だと思ってる。
ホント、何なんでしょうね。
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