獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
353 / 404
第四部

たくさんのことを学びたいと

しおりを挟む
私は、そういう親を嫌だと思うから、自分はそういう親にはなりたくないと思うから、震電に対しても、そういう親がするようなことをしたくないんです。

震電の<親>は伍長ですけど、私だって力になろうと思います。他でもない私がそうしたいんです。たとえ尊敬できない親を持った私でも、それ以外では素晴らしい出会いにも恵まれました。大学の教授や、看護師時代の先輩、訓練兵時代の教官。皆さん、私の両親が教えてくれなかったことを教えてくれました。それを震電にも伝えたい。

他者を敬うこと。他者に信頼される自分であることが結局は自分自身にとっても利になること。そして、他者に厳しい人間は実際には自分に甘いだけだということ。

本来なら親が教えるべきことを、私の両親は教えてくれませんでした。

当然ですね、子供を、自身の体裁を取り繕うための道具としか思ってないんですから。そんな面倒臭いことをいちいち教えたくなかったんでしょう。

あの人達は、猫にとってはよい飼い主だったみたいですから、子供なんか作らずに猫だけ飼ってればよかったんでしょうね。

なのに子供なんか作った結果、その子供は、自分達が蔑んでいた軍人になって、挙句、地球から遠く離れた未知の惑星で得体の知れない何かに取り込まれて人間としての生涯を終えたんですから、実に無意味でした。

まあ、老後はロボットが世話してくれるから心配ないでしょうけどね。

ロボットが発展する以前は、老後の世話をさせるために子供を作ったという親もいたそうですが、おかしな話です。だってそうでしょう? 野生の生き物で年老いた親の世話をするようなのが、どれだけいます? 子世帯がそんなことにリソースを割かれてたら社会の損失じゃないですか。

だけど、世の中には、子供から見て『恩を返したい』と思える親もいたでしょうから、すすんでそうしたい人はすればよかったでしょう。でも私は、あの両親の老後の面倒なんて見たいとも思いません。

それをロボットが肩代わりしてくれるんですから、子供にとってはもちろん、素人に過ぎない子供の世話になるよりよっぽど手厚い世話をしてもらえますし、親自身にとってもその方がいいでしょう?

とにかく、<親の体裁を取り繕うための道具>や、<老後の世話係>としか子供を見ない親に、私はなりたくありません。

そのために、震電と伍長からたくさんのことを学びたいと私も思います。

いずれ少佐の子供を育てる時のために。

<震電の親>をやってる時の伍長は本当に参考になります。怒らず、焦らず、具体的な対処を心掛ける、<当たり前の親>としての参考に。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の娘、チョロインじゃん!

ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ? 乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……? 男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?  アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね? ざまぁされること必至じゃね? でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん! 「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」 余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた! え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ! 【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

【完結】転生少女は異世界でお店を始めたい

梅丸
ファンタジー
せっかく40代目前にして夢だった喫茶店オープンに漕ぎ着けたと言うのに事故に遭い呆気なく命を落としてしまった私。女神様が管理する異世界に転生させてもらい夢を実現するために奮闘するのだが、この世界には無いものが多すぎる! 創造魔法と言う女神様から授かった恩寵と前世の料理レシピを駆使して色々作りながら頑張る私だった。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

処理中です...