獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

気休めにもならない

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『生きるというのは、他の命をいただくということ。それは、生きるためにこちらの命を狙ってくるものを退けるというのも含めての話』

生存競争の何たるかを改めて自らに言い聞かせ、私は<対ゴヘノヘ用決戦兵器>の設計について見守ります。

ザフリが指揮を取り、全体を監督し、ティクラやルッセン達職人が試作を繰り返しながら設計図を書き上げていく。

そして試作のための材料についても、鼠人そじん兎人とじん達が伐採、山羊人やぎじん達が運搬と、役割分担が出来上がっている。

素晴らしいですね。

ですがそれはあくまで、力を合わせなければ安全さえ守れない厳しい環境であるからこそというのもあるでしょう。さらに社会が成熟して余裕が出てくると、今度は財を蓄え権力を手にする者が出てきて、結果、貧富の差が生まれ、力を持つ者が持たざる者を利用し搾取を行い、さらに格差を広げていくということも起こるかもしれません。

それについては、私達がこの世を去った後に起こる可能性のあることなので気にしても詮無いのだとしても、なるべく極端なことにならないように知恵を絞らないといけないというのもあると思います。

地球では、その時その時に試行錯誤を繰り返す形だったために時には大きな<失敗>もあったでしょうが、私達は先人達のその失敗を知っています、ならば同じ失敗を繰り返す必要はないはずです。

『他所から略奪を行わなければ生きていけない』

そんな状況を作らないように先手先手で対応していかなければ。

ゴヘノヘの件についても、地球ではかつて<生贄>を捧げることで被害の拡大を防ごうという選択が取られたりしましたから、同じ流れになる可能性だってあるでしょう。実際、ついていけない者は集落に残して避難したというのは、ある意味では生贄を捧げているのに近く、やがてそれが形式化していけば、

『無垢な乙女を捧げることで荒神を鎮める』

的な解釈にだって至るかもしれない。

『無垢な乙女を捧げることで荒神を鎮める』など、本当にただの気休めにしか過ぎないという事実からは目を背けてそれが正しいと思い込んでしまう。

そういうことが起こるのが<人間>というものでしょう。そんなことになれば、それこそメイミィやラレアト達が生贄として捧げられることにもなりかねない。けれど、

<ゴヘノヘという生き物の生態>

を客観的に見れば、そんなことは気休めにもならないというのは分かるはずなんです。ならば、あらかじめ具体的な対抗策を確立しておけば済む話じゃないですか。

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