獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

専任の仕入れ係

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近々、<仕入れ係>を用意しないといけないかもしれませんが、今の時点ではまだ何とかなってますので人材が確保できればということでいいでしょう。

「仕入れ係については検討しておく」

メイミィとラレアトにもそう伝えておきます。

「はい」

二人もそれで納得してくれました。と同時に、

「そういうわけで、専任の仕入れ係が必要かもしれません」

深夜。ラレアトが寝た後で帰ってきた少佐にそう伝えます。

「分かった。僕も気にかけておくよ。今のところは、それぞれの集落に立ち寄った際に分けてもらえるように交渉しておこう」

との返事。そうです。少佐が各集落に折衝に立ち寄ったついでに、仕入れも依頼すれば手間が省けます。今もある程度はそういう形で仕入れてますし。ただそれだと少佐の都合に影響されるので、いずれはやっぱり専任の仕入れ係が必要になるでしょうが。

私達は商業についてはまったくの素人なので、どうしても知識に乏しく、こうして逐一必要なものを揃えていく形になってしまいましたが、でも、それもまた、よろずやそのものが成長していくのを見る感じになって楽しいとも言えるでしょう。

一方、<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の設計も順調に進んでいます。試作を繰り返し問題点を洗い出しつつなので一見すると時間が掛かっているようにも思えますが、一号機についてはとにかく形にすることを優先したのもあって実用に耐える出来ではなかったわけですし、結果、こうして二号機を作ることになったのを思えば、『急がば回れ』ということですね。

次のゴヘノヘの襲来には、これまでのことを考えるとまだ時間的な余裕はあるはずです。ただ、少佐の推測では、

「おそらく、ゴヘノヘと飛ばれるあの巨大生物の生息域で、数年から数十年周期で天候不順などの理由により一時的に餌が不足するんだろうな。それで、敢えてあの山脈を超えて食糧を求めてこちらにまで足を延ばす個体が出るんだと思う。

しかし、必ず超えられるとは限らず、無事に超えられた個体が獣人達を襲うんだろう。そして結果的に追い返される形で戻っていくものの、もしかするとそれさえ、無事に本来の生息地に戻れるとは限らない可能性もあるね」

とのことでした。もしそれが当たっていれば、ゴヘノヘ側としても生きるために必死だということになりますね。でも、だからといってこちらとしても黙って命を差し出す道理もありません。生存競争ということであればなおさらです。

生きるというのは、他の命をいただくということ。それは、生きるためにこちらの命を狙ってくるものを退けるというのも含めての話なんです。

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