獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

ただのオブザーバー

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そんなこんなで、今はもうただのオブザーバーでしかない私は、よろずやの方にも意識を向けます。

「こっちの品物の在庫、いける?」

「うん、まだ大丈夫。だけどそろそろ補充しなきゃね。誰か持ってきてくれると助かるんだけど」

「そうだね。お客さんが持ってきてくれるの待ってるだけじゃやっぱり確実じゃないよね」

「だよね。仕入れ方法をちゃんとしないとそのうち行き詰まるかも」

メイミィとラレアトがそんなやり取りをしているのが聞こえました。元々流暢に言葉を話していたメイミィに引っ張られてか、ラレアトもすっかり流暢に話せるようになっています。しかも言葉だけじゃなく、よろずやの運営そのものについても理解が深まってるのも感じるんです。だから私はそれこそ、<店長>どころか店を完全にスタッフに任せてる<オーナー>的な立場になってる気がします。

でもまあ、万が一何かあった時には責任を負わないといけないので、やっぱりまだ店長的な立場かも知れませんけど。

それでも、現場を受け持ってくれてる人達が成長してるのは嬉しいですね。トームは二人ほどは店については理解できてないみたいなので、この辺りも<適性>の問題でしょう。トームは真面目だけど、<経営>とか<運営>とかについては気が回らないと言うか。

だからってトームが劣ってるという意味じゃありませんよ? <対ゴヘノヘ戦>の際には彼の決断と能力には救われましたから。そういうことです。

となると、メイミィとラレアトが言うように、<仕入れ係>のような人も必要ですか。<お客>も増えてきましたしね。

しっかりと<社会>が成立し始めているのも感じます。もちろんこれ以前にも獣人達にはそれぞれの社会が出来上がっていたんでしょうけど、異なる種族が一つの社会を築くという形にシフトしてきたといいますか。

私達がいなくてもいずれはそうなっていたとしても、大きな衝突なく穏当にそうなっていけることに貢献できているなら私達としても嬉しい限りです。

<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機の建造>

<よろずやの体制強化>

<獣人社会の成熟>

それらを私と少佐と伍長だけで実現することはできません。ここに暮らす人達との連携だけがそれを実現してくれる。

その事実を忘れちゃいけません。人間は一人では生きていけない。

『自分一人の力でも生きていける!』

そんな風に考えるのはただの<中二病>です。だから翻って、

『お前一人の力で生きていけ!』

とか誰かに対して口にするのも<中二病>に過ぎません。社会というものを理解しているなら、口にできることじゃありませんから。

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