獣人のよろずやさん

第四部

その場の思い付きで行うわけじゃ

テロリストを制圧する作戦というのは、ありとあらゆることを想定し、それに備えたシミュレーションを重ね、訓練を繰り返した上で臨むんです。決して、漫画やアニメや映画に出てくる特殊部隊のように、その場の思い付きで行うわけじゃありません。

それでもなお、被害は出ることがある。そういうものなんです。

だからたった三人しかおらず本来の装備も何もない私達が、彼らを脅すことなんてできるわけないじゃないですか。

利益供与についても、確かによろずやとして彼らに利益を供してますけど、それさえ、彼らの協力があってこそのものです。一方的に供与できてるわけじゃありません。

となれば、脅すことも利益供与も無理ですよね。じゃあ、どうやって＜対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機＞を建造するんですか？

彼らの信頼を得、彼らの協力を得なければただの＜絵に描いた餅＞ですよ。

＜他者の協力＞なしには私達なんて本当に無力なんです。

だから震電のことも助けるし、彼女が自分の力で生きていけるようになるように協力もする。完全に一人で生きられるようにはならないとしても、そもそも誰の力も借りずに生きていける者は、ここにだってそんなにいないんです。

ラレアトが仲間を完全に捨てて好きなように生きることを選べなかったのも、それをしたら生きていけるのかさえ定かじゃなかったからです。だから極力、仲間達の理解を得ようと努力を重ねたんです。

それもなしに、

『自分は一人で生きていける！』

とか、子供以下の発想ですよ。少なくとも普通の子供は、自分だけじゃ生きていけないのを理解してますから。

今の震電が一人じゃ生きていけないのも同じです。

私達はそれをきちんとわきまえる。わきまえているから生きていける。

そして、＜対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機＞の設計も、みんなで力を合わせて作り上げていきます。

これによってようやく、頭部の設計の目途が立ちました。これでいよいよ、次に進める。

本体部の設計に。

本体部も、一号機の設計をそのままでは使えませんでした。まずは、全体的に明らかに強度不足です。＜ゴヘノヘ神輿＞との＜喧嘩神輿＞でも、それは露呈しました。元のそれでは、ゴヘノヘがもし組み付いてきたらたちまち破壊されていたでしょう。

まさにただの＜案山子＞です。見た目だけだと見破られれば何の役にも立たなくなる。

だから、万が一組み付かれたとしても、容易く破壊されないような強度を目指さなければ。脆さを悟られたら完全に侮られますしね。