獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

可愛らしい外見とは裏腹ですね

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抱いてみると分かるんですけど、震電は、すごくみっちりと肉が詰まっている印象の体をしています。<瓜坊>そのものな可愛らしい外見とは裏腹ですね。

これくらいでないとここでは生きていけないんだとすごく思わされます。

「おう、ありがとうな」

そう私を労いながら震電を受け取って、伍長は家に戻りました。

震電も、明らかにホッとした様子。悔しいけれど、私より伍長の方がいいんだということですか。ただ、それでいいんだとも感じるんです。

『震電にとって伍長が一番』

それが正しい在り方だと。伍長はそれだけもう震電からの信頼を勝ち得ているんだなと。そして同時に、

『血の繋がりは絶対じゃない』

とも。

トームがリータとちゃんと<父と子>になれたのは、血の繋がりのおかげじゃなくて、トームがそれだけ努力したからなんだと改めて感じます。

本来、父親は自分の子供が生まれても、自分自身の胎内で育てたわけじゃないから、実感はほとんどないでしょう。

DNA検査ができるようになるまでは、

『あなたの子供です』

と言われればそれを信じるしかなかった。実際、親子関係がないにも拘わらずそうとは知らされないまま育てさせられた事例もあったそうですね?

では、父親はどうやって<親>になるんですか? 子供と触れ合い交流を図り、信頼を勝ち得ることで、

『親子になっていく』

のではないですか? その点では、伍長もトームも間違いなく<親>でしょうね。

漫然と、ただ法律上の親子関係だから『親子だ!』と言ってるだけなのとは違う。

『配られたカードで何とかするしかない』

と言うのなら、これだってそうですよね? 自分が<母親>ではなく<父親>であるというのも、

<配られたカード>

なのではないですか? 自分を正当化しようとする時だけ『配られたカードで何とかするしかない』と口にして、逆に自分にとって都合が悪いとなれば、それを無視するんですか?

随分とムシのいい話ですよね。

そんなムシのいい話が通じると思う方がどうかしてるんじゃないですか?

現に通じてませんしね。父親として子供から信頼を得る努力をしてない父親が子供から嫌われたり反発されたりなんて、枚挙に暇もないじゃないですか。

どうして伍長やトームにできることができないんですか?

伍長やトームが特別だからですか? おかしいですよね? 伍長やトームだけが特別だと言うのなら、どうして子供が全員同じようにできて当たり前という話になるんですか? 伍長やトームのようにできる父親とそうじゃない父親がいて当たり前だと言うのなら、子供だってできる子供とできない子供がいて当たり前じゃないですか。

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