獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

実際の運用を想定した<模型>を作って

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そんな調子で伍長が震電を育ててる間も、ザフリを長として<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の設計についての検討が進みます。

ティクラとリトリトが作った、だいたい三分の一くらいの大きさの模型を基に、実際に武装の模型も作って確かめます。

牽制用のボウガンを装備することでおおむね決まったわけですが、それを実際に操作するための仕組みがこれまた厄介で……

なるべく危険に曝さないようにしたいのですから、誰かがそこに搭乗して操作するのでは意味がないんです。遠隔で操作できなければ。

けれど、ボウガンの引き金を絞るのはロープを長く伸ばすことでできるでしょう。ただ、矢を改めて番えるのはおよそ現実的ではありません。そのため、事実上、

『一回きりの使い捨て』

に近い運用になると思います。なのでそこは割り切ることとして、後はいかに確実に矢を放つかですね。

これについても、実際の運用を想定した<模型>を作って検討することになりました。

よろずやの裏手の林の中を一部囲って、その中に機構を再現します。木の幹に固定したボウガンを、長く伸ばしたロープを引くことで操作するんです。いくつもの枝にロープを引っ掛けて、それを、

<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>

の内部を通している状態と見立てて、トームがロープを引くと、

ブチッ!

「あ……」

途中の摩擦による負荷が大きすぎて、引き金を絞れるように動かそうとするとかなりの力が必要なんですが、それ自体は山羊人やぎじんなら余裕程度の重さで済みそうなんですが、ロープの強度がそれに追いつかずに、ちぎれてしまったんです。

さすがにこれは無理がありましたか。ロープの強度を上げる以上に、途中の摩擦を減らすことで負荷を下げる方法の検討に。

「油を塗るのは?」

「イヤ、アブラ、ヌリスギルト、ロープ、イタム」

私の単純なアイデアにティクラが難色を示しますけど、まずは試してみることにして、

ブチッ!

「あ……」

うっすらと塗るだけならまだしも、大きく摩擦を下げるために必要なだけを塗ると今度はロープの強度が下がって切れてしまったんです。

それでは意味がない。

「ジャア、コロヲ、ツケヨウ」

ルッセンの提案でロープが掛かる部分に<コロ>を利用した摩擦軽減機構を設置、試します。

バキッ!

今度は、摩擦軽減機構の方が負荷に耐えられず壊れてしまいました。コロが折れたり、外れたり。

なにより構造が複雑になって整備性が大きく低下するであろうことは明白です。しかし、じゃあ代わりの方法はと言えば……

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