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第四部
常に守ってくれる誰かが傍に
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教導を終えて家に戻った伍長は、震電やクレアと一緒に寝ます。彼は夜間の獣蟲に対する警戒も役目ですから、夜の方が主な勤務時間なんです。だからこそ、寝られる時には寝る。猪人の集落に出向いている時も半分は寝ていたりするそうです。
必要な時に万全な状態で望めるように、
『休息を取ること自体が仕事だ』
という認識が私達軍人にはしっかりとあります。加えて伍長の場合は特に、
『短い睡眠を頻繁に採る』
ことに適応した体質をしているそうです。わずか数分の睡眠で全力を出せるようになるのだとか。
そういう点では羨ましくもあります。
また、伍長は、常に震電の体に触れているのが分かります。震電の目が見えない分、そうやって触れることで常に守ってくれる誰かが傍にいることを伝えるんです。
結局、その安心感が精神を安定させ自己肯定感を作り心の余裕を持たせることを、彼は知っているんですね。
リータもそうでした。実はトームが一緒に暮らせるようになるまでは伍長がリータの父親代わりで、実際にリータも伍長に懐いていた。
だから、トームがリータに父親であると認められるには、最低でも伍長と同じ程度のことができるようにならなくてはいけなかった。いえ、<戦闘力>ではなく、リータを受け止めるという意味で。
実は、トームに父親としての在り方を指導したのも伍長です。
「子供に信頼されなきゃ話になんねえ。まずは敵じゃないことを理解してもらえ」
そう言って、いきなり抱っこしてあやすんじゃなく、ただ傍にいてリータにとって危険な存在じゃないことを理解してもらうことに努めました。
この段階を経てまずは敵じゃないことをリータに理解してもらったんです。そうすると逆にリータの方から近付いてきたりします。そこでようやくコミュニケーションが取れるようになる。
時間が掛かります。手間もかかります。でも、その時間や手間を惜しんでいては信頼関係など築けないことは、仕事をしている人なら分かるんじゃないですか?
いきなり相手を自分の都合に従わせようなんてする人は信頼されません。私だって信頼しません。愛想よく笑顔で距離を詰めてくる人間なんて、それこそ信用できませんね。その笑顔の裏の意図を推測してしまいます。もちろんただの邪推に終わることもないわけじゃないですけど、実際には多くの場合で別の意図を隠し持っていましたから。
男性だけじゃなく、女性でも。
男性の場合は、まあ、たいていが性欲に基いた下心でしたけど、女性の場合はもっと複雑で、でも自分に都合よく利用してやろうという意図であることは事実でしたね。
必要な時に万全な状態で望めるように、
『休息を取ること自体が仕事だ』
という認識が私達軍人にはしっかりとあります。加えて伍長の場合は特に、
『短い睡眠を頻繁に採る』
ことに適応した体質をしているそうです。わずか数分の睡眠で全力を出せるようになるのだとか。
そういう点では羨ましくもあります。
また、伍長は、常に震電の体に触れているのが分かります。震電の目が見えない分、そうやって触れることで常に守ってくれる誰かが傍にいることを伝えるんです。
結局、その安心感が精神を安定させ自己肯定感を作り心の余裕を持たせることを、彼は知っているんですね。
リータもそうでした。実はトームが一緒に暮らせるようになるまでは伍長がリータの父親代わりで、実際にリータも伍長に懐いていた。
だから、トームがリータに父親であると認められるには、最低でも伍長と同じ程度のことができるようにならなくてはいけなかった。いえ、<戦闘力>ではなく、リータを受け止めるという意味で。
実は、トームに父親としての在り方を指導したのも伍長です。
「子供に信頼されなきゃ話になんねえ。まずは敵じゃないことを理解してもらえ」
そう言って、いきなり抱っこしてあやすんじゃなく、ただ傍にいてリータにとって危険な存在じゃないことを理解してもらうことに努めました。
この段階を経てまずは敵じゃないことをリータに理解してもらったんです。そうすると逆にリータの方から近付いてきたりします。そこでようやくコミュニケーションが取れるようになる。
時間が掛かります。手間もかかります。でも、その時間や手間を惜しんでいては信頼関係など築けないことは、仕事をしている人なら分かるんじゃないですか?
いきなり相手を自分の都合に従わせようなんてする人は信頼されません。私だって信頼しません。愛想よく笑顔で距離を詰めてくる人間なんて、それこそ信用できませんね。その笑顔の裏の意図を推測してしまいます。もちろんただの邪推に終わることもないわけじゃないですけど、実際には多くの場合で別の意図を隠し持っていましたから。
男性だけじゃなく、女性でも。
男性の場合は、まあ、たいていが性欲に基いた下心でしたけど、女性の場合はもっと複雑で、でも自分に都合よく利用してやろうという意図であることは事実でしたね。
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