獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第四部

強い方が当然勝ちます

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でも同時に、力の弱い側が、相応の覚悟を持って強い相手に挑んでいる場合にも、すぐには止めないそうです。もっとも、たいていは止めることになるみたいですけど。

『折れない心で挑めば相手は怯む』

フィクションにおいてはよく見られる展開ですが、現実では、少なくともここではそうそうあることじゃありません。相手だって生きるか死ぬかの世界で生きてる者ですからね。なるほどぬるま湯のような世界で生きていた者が、いきなり死に物狂いで掛かってくる者相手に最初は怯んだりすることもあるでしょう。ですが、そんなものは最初だけです。相手の出鼻をくじくことに失敗し気持ちの立て直しができる余裕を与えてしまえば、強い方が当然勝ちます。

弱者が強者を圧倒するなど、現実にはまず有り得ないんです。あったとしてもそれはあくまでただの<例外>。普遍的なものとして語れるような事例じゃない。

だから、挑むのはいいんですが、短期決戦で攻め切れなければ止めるそうです。ただのケンカならまだしも、命に係わるようなことはさせません。

私達がゴヘノヘに挑んだのは、あくまで勝算があったからです。<個の力>ではまったく話にならなくても、<集団の力>となれば話は別です。実際にゴヘノヘを追い払えたのは、私達の方がわずかに強かったから。戦場というのはそういうものです。

<戦略>や<戦術>といったものも含めての<強さ>ですから。

個人のケンカとは違います。

震電は、ケンカではきっと勝てないでしょう。そういう意味の強さは持っていないと思います。けれど、彼女に何ができるのかは、彼女が実際に成長してみないと分かりません。視力に頼らず生きている生き物がいる以上、『目が見えない』という事象だけでは判断がつかないのも事実。

ハンデはあっても必ずしも<弱者>とは限らない。もちろん、視覚能力が要素の大部分を占める戦い方では勝てなくても、それを補って余りある何かがあれば、戦い方によっては勝てる場合もある。

ここの世界では特に。

何しろ、夜の暗さは半端じゃありません。視力に頼っていては満足に身動きも取れなくなる。もちろん、こちらに有利な状況に誘い込むのも戦略ではあるものの、それが通用しない相手となれば、視力に頼らずに戦わないといけなくなる場合もある。

だいたい、梟人きょうじん山猫人ねこじんのように夜行性の種族だっているんです。どちらも暗視能力が高い種族ではありますけど、同時にとても耳がいいんです。

周囲の大まかな状況さえ把握できるくらいには。

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