獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
311 / 404
第四部

対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機、設計開始

しおりを挟む
かつて、<対ゴヘノヘ戦>の際、おさの意向に逆らえず全面的な協力ができなかったことを悔やんでいたザフリは、今度こそと考えているようですね。

<ゴヘノヘ神輿>を建造した時にも積極的に関わってくれて、それで全体を大まかとはいえ理解できたそうです。

なので、今回の<対ゴヘノヘ用決戦兵器二号機>の設計から中心メンバーとして参加してくれることになりました。

設計に関しては、少佐と私以外には、

鼠人そじんの棟梁、ティクラ。

鼠人そじんの職人、リトリト。

兎人とじんの棟梁、ルッセン。

兎人とじんの職人、タセルイ。

そして山羊人やぎじんのザフリ。

以上の七人で行うことになりました。

七人でよろずやに集まり、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>の設計図をテーブルに広げ、まずは設計上の問題点を洗い出します。

するとティクラが、まず、

「アタマ、イラナイ。ジャマ」

と早速ぶっちゃけてきました。確かに、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>の頭は、あくまでゴヘノヘを威嚇するために敢えてゴヘノヘを模した意匠を施しているだけの<飾り>のようなものでしかありません。実際に威嚇の効果があるのかどうかもそもそも分かりませんし。

しかも、頭と尻尾でバランスを取る前傾姿勢が基本のゴヘノヘに対し、いわゆる<ゴジラ型怪獣>と呼ばれる、上半身を起こした直立二足歩行形態であるため、シルエットはゴヘノヘとは似ても似つかないんです。

だから頭を付けるというのは、無駄に重量が増え重心が高くなり、工作の手間も増えるという、正直申し上げて何のメリットもないような行為なのも事実です。でも、それに対して、ルッセンが、

「デモ、ソレジャ、ツヨソウニ、ミエナイ。アタマハ、イル」

と反論します。けれどティクラは、

「ツヨソウ、カンケイ、ナイ。ツヨイ、ノ、ダイジ」

そう言って譲りません。確かに、『強そう』と『強い』は必ずしも一致しません。軍の兵器も、『強そうに見える』ことを主眼に作られるわけじゃありませんし。あくまで実際の『強さ』と言いますかあくまで兵器としての機能を重視して作られます。見た目による心理的な効果を期待して作られる事例がないわけじゃありませんが、それさえ、生産性や整備性を犠牲にしてまで拘られることじゃないんです。

とは言え、<人型戦車>とも呼ばれる<ランドギア>は、かつての<騎士>や<侍>といった、戦場で味方を鼓舞する役目も負った特殊兵装をまとう者達に見立てて戦場を<演出>するために敢えて人間を模した二脚二腕のロボットだったりもしますが。しかし同時に、

『前面投影面積を従来の戦車以下にするために全高三メートル程度に抑える』

『必要とあれば伏臥姿勢を取った状態でも運用できるようにすることでさらに被弾率を下げる』

といった部分も疎かにしないですからね。

しおりを挟む

処理中です...