獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

激突

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「ヒケッ!」

「ヒケエエッッ!!」

ダイガとブオゴは声を張り上げて指示を出します。それに従って担ぎ手達はそれぞれ対ゴヘノヘ用決戦兵器とゴヘノヘ神輿を引いて間合いを取り、

「イケエッ!!」

「オセエェッッ!!」

離れてても耳元で言われてるかのような大変な圧のある掛け声を受けて、担ぎ手達も、

「ウオオオオオオーッッ!!」

気合を爆発させます。そしてまた、バゴンッッ!!と激しく激突。と、今度は、バギッッ!!という音が。さらにメリメリメリと破壊音。対ゴヘノヘ用決戦兵器の、<ゴヘノヘを模した頭部>が、根本付近から大きく傾いていたんです。そして、ゴヘノヘ神輿の頭部に寄りかかるようにして支えられていたものが、三度ぶつかり合うために間合いを取ると、バリバリバリと音を立てて崩れ落ちてきました。

破片がダイガにも降りかかりますけど、彼はそんなこと、まったく気にしません。それどころか、誰も気にする素振りもない。

ただ、

「止まれえーっっ!!」

伍長が両手を拡声器代わりに構えて声を発し、止めます。そして、手近な猪人ししじん山羊人やぎじん達に指示を出して、崩れ落ちた頭部を引きずって排除します。このまままたぶつかり合ったら、挟まれた部材がどんな風に弾けて思わぬ事故を起こすか分かりませんので、排除したんですね。当然の判断です。

また、彼の指示に従ってくれるということが、彼がいかに信頼を得ているかも証拠でもある。地道な努力の積み重ねがまさにこういう時に現れるんですね。

そして、崩れ落ちた部材が撤去されると、

「始めぇーっっ!!」

再び号令を掛け、対ゴヘノヘ用決戦兵器とゴヘノヘ神輿がすさまじい勢いで三度激突。しかし、さすがに担ぎ手の人数で有利だった対ゴヘノヘ用決戦兵器の方がついに圧力で勝り、ゴヘノヘ神輿をわずかに押し返しました。

するとそのまま渾身の力を込めて押します。

「オセーッ! オセェエエエェーッッ!!」

頭の部分がもげた対ゴヘノヘ用決戦兵器に掴まり、ダイガが鼓舞します。負けじとゴヘノヘ神輿のブオゴも、

「マケルナアッッ! オセエーッッ!!」

吠えます。

ですが、メキメキときしみつつぶつかり合う対ゴヘノヘ用決戦兵器とゴヘノヘ神輿は、じりじりとゴヘノヘ神輿側へと押し込まれていきました。担ぎ手達も渾身の力を込めて押しますが、踏ん張った足がそのまま地面を滑ります。

そして、神輿の半分くらいまでの距離を押し込まれたところで、

「勝負ありっっ!!」

伍長が対ゴヘノヘ用決戦兵器側の手を上げて、宣言したのでした。

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