獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

いろいろな出し物

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こうしてリニャスとルシニアにも邂逅し、ある意味ではお祭ならではの状況だと実感します。

そんな中で、舞台ではトーナメントも行われ、かと思うとそのへんでも予選落ちした猪人ししじんらの野良試合も行われ、しかもそれを他の獣人達も楽しんでたりしつつ、普通に屋台巡りをしてる者もいる。

実に、混沌とした空間でした。

でも、なんだか悪くない。不思議と笑えてきてしまう。そんな中を、私は、メイミィとラレアトを伴って、見て回ります。

鼠人そじんの屋台では、彼らが作った弓と矢で、同じく彼らが作った木彫りの人形を狙い撃つ、射的のようなことも行われてて、私も、

「ようし! 元軍人の腕前を見せてやる!」

と意気込んだのは良かったのですが、やっぱり弓と矢の精度がまだまだ十分ではなくて狙いが定まらず、そのクセを掴むのに時間がかかってしまって、最初のうちはグダグダでした。

ただ、<お金>は必要ないので、やりたいなら何度でもできるからムキになってやってるうちにコツがつかめて、やがて百発百中に。

「ビアンカ、すご~い♡」

「スゴ~イ♡」

メイミィとラレアトだけじゃなく、

「ワ~ッ!」

「スゴイスゴイ!」

子供達も歓声を上げて見てくれてて、私もすごく楽しめて。

他にも、人間と同じくらいの大きさのゴヘノヘの模型を飾って、それに、蔓を巻いてボールにしたものをぶつけるという屋台もあって、子供達に大人気でした。

さらには、細い木の枝で、カブトムシやクワガタムシに似た甲虫を吊り上げるという屋台も。これは、敢えて怒らせて攻撃の姿勢を取らせて、木の枝に自ら掴まらせるのがコツみたいですね。強引に引っ掛けて吊り上げようとすると、枝が細くてヤワいので、折れてしまうんです。

かと思うと、トーナメントには出られなかったものの『力では誰にも負けない!』と思ってる猪人ししじんが、伍長が教えた<腕相撲>でお客を迎え撃つという屋台もあって、猪人ししじん以外の相手と腕相撲をしてました。しかも、成体おとな相手には容赦なく捻じ伏せすけど、子供が相手だと、「ウ~ン! ウ~ン!」と唸って抵抗した後、「ヤラレタ~!」と言って負けてくれたりしていました。<正々堂々>が信条の猪人ししじんながら、最初から負けるはずのない相手に対しては、そうやって楽しませようとしてくれたりもするという。

それらは、私達がアイデアを出したわけじゃないのに彼らが自分で思い付いて始めたことです。そう、彼らも自らそういうことを思い付く発想を持ってる。今は食べ物の屋台が多いですけど、次からはもっといろいろな出し物が増えるかもしれません。

すごいです。感心させられます。

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