獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

リニャス

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とは言え、

『様々な価値観と折り合うためには我慢しなければならない部分も出てくる』

のは事実でも、だからといって、

『ニャルソの気持ちを、私が我慢して受け入れる』

というのは違います。私が我慢するべきなのは、彼が私へのアプローチを諦めないことでしょうね。

一方、ニャルソが我慢するべきは、自分の気持ちを私が受け入れないこと。もっとも、彼がどの程度それが堪えているのか分かりませんが。

すると今度は、

「こんにちは、ビアンカ♡」

またしても甘ったるい感じの声。でも、ニャルソじゃない。私が振り返った先にいたのは、

「リニャス……」

そう、<リニャス>。ニャルソの本来のパートナー。ニャルソいわく、『ビアンカに似て美人』という。まあ、頭の部分が猫を思わせる造形になっているので、実際には似ても似つきませんが。

そのリニャスが腕に抱いていたのは、<幼体こども>でした。一目見て、

『ニャルソの子だ……』

と分かるくらい、顔立ちも毛の色もそっくりな。

「ルシニア、ご挨拶」

「……こんにちは……」

リニャスに促されて、<ルシニア>と呼ばれたその子はおずおずと私に挨拶をしてくれました。ちょうど人見知りが始まってる感じでしょうか。物怖じしないことが種族としての特徴のような山猫人ねこじんとしては意外にも思えますけど、山猫人ねこじんの子供は、割と幼いうちはその感じらしいんですよね。でも、成長と共に物怖じしなくなっていくと。

「こんにちは、ルシニアちゃん♡」

さすがに小さい子相手にあんまり身構えるのもなんですから、私も笑顔で応じます。

「こんにちは」

「コンニチハ」

メイミィとラレアトも、ちゃんと挨拶してくれます。ニャルソのことがあってもそれとは別ですからね。

実は、ニャルソが私にしつこくアプローチをしてきたり、他の雌と仲良くしてるのは、リニャスがルシニアの世話で忙しいというのもあったみたいです。

山猫人ねこじんは、猪人ししじんと違って基本的に母親だけで子育てをします。種族としてかなり<個人主義>に振り切れた面もある山猫人ねこじんとしては、それが逆に普通なんです。それに、山猫人ねこじんに限らず獣人達の子供は、ノーラとトームの子供のレータを見ても分かる通り成長が早く、人間の赤ん坊ほどは手もかからない。手がかかる期間も短い。

それでも、その短い<手のかかる期間>については子供に集中するので、パートナーの雄は、他の雌のところを渡り歩くという。

だけど、子供がいればそちらに集中しながらも、子供がいなかったり大きくなったら、雌も、『これだ!』と思った雄には躊躇なくアプローチするそうなんですけどね。

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