獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

努力が本物だったからこそ

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とは言え、<歌舞供者かぶくもの>も<歌劇團>も、表面だけをなぞった<ごっこ遊び>では、本気で<歌舞伎>や<歌劇団>を目指した女性や男性の本当の受け皿とはなりません。<紛い物>では駄目なんです。基になったそれとは別に設立されたのだとしても、そこで行われる歌舞伎や歌劇そのものは、<本物>でなければならない。

ゆえに、参加した方々は、それこそ血の滲むような努力を重ねたと聞いています。<本物>を作り上げなければいけなかったんですから。その努力が本物だったからこそ、千数百年を超えて<伝統芸能>へと昇華させたんでしょうね。

ラレアトの件も、いずれは兎人とじんの社会そのものを変化させる第一歩になるかもしれません。でも、だからこそ、いい加減な気持ちでは望めない。

レギラとボゼルスの料理でお腹と心が満たされた上で、

「お祭、成功させようね」

「ウン……!」

私とラレアトは、そう言葉を交わしました。

いよいよ、祭本番です。



フロイにラレアトの見守りをお願いしてましたが、その後も、特に問題はありませんでした。

そして祭前日。皆、最終の準備に余念がありません。今夜はそれこそ祭会場に泊まり込む覚悟の者達も多い。

私と少佐も、責任者として会場に泊まり込みです。よろずやも、店の方は閉めて、祭会場に臨時の店舗を置き、営業します。でも、獣蟲じゅうちゅうを警戒しないといけないので、伍長とクレアはよろずやの方に残っていますが。

さらに、メイミィとラレアトも、今日は、

「一緒にいる!」

「ワタシモ」

と、気合が入っています。二人だけじゃなく、多くの獣人達に<熱>が広がり、すでに静かな興奮状態にあるのが感じられました。正式な開始は明日ですけど、事実上、祭は始まっているような状態ですね。

ところで、もうよろずやの臨時店舗も営業を始めているので、フロイが店番をしてくれています。ラレアトが今日はここに泊まり込むつもりですから。

私と少佐は、<対ゴヘノヘ用決戦兵器>と、<ゴヘノヘ神輿>について、最終的なチェックを行います。

ただ、じっくりと時間をかけて設計から建造を行ったゴヘノヘ神輿はともかく、対ゴヘノヘ用決戦兵器の方は、前にも申し上げたように、素人が急いで設計したことによる無理が祟って、一度も実戦さえ経験していないのに、何度か簡単な訓練を行っただけでガタがきている状態でした。なので、次のゴヘノヘの襲来どころか、今回のゴヘノヘ神輿との<喧嘩神輿>を最後にお役御免となるでしょう。

そして、再設計して新たに<対ゴヘノヘ用決戦兵器第弐号機>として生まれ変わる予定です。

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