289 / 404
第三部
一時的な気休めだったとしても
しおりを挟む
たとえ一時的な気休めだったとしても、レギラとボゼルスの料理は、ラレアトを確かに癒してくれました。
「コミン、ナクテモ、ヘイキ…♡」
ラレアトが笑顔でそう言うんです。久しぶりの彼女の笑顔でした。
「そうだね。美味しいものは他にもあるよね♡」
私も自然と笑顔になります。そんな私達の様子を見て、レギラとボゼルスも、ホッとした様子でした。彼らも私達を気遣ってくれてたんです。
結局、そういうことですよね。こうやって誰かが気遣ってくれたら嬉しいし、心の支えにもなる場合があるんです。
怒鳴ったり声を荒げたりという人は、要するに自分の思い通りにしようとしてそうならないからただ感情的になっているだけですし。
『お前のためを想って』
なんていうのも、所詮は、
『相手のためを想ってるつもりの自分に酔っている』
だけですし。
その人のことを本当に想っているのなら、その人に適したやり方を提示しなければ意味がありません。それを『面倒だ!』とおっしゃるのなら、やっぱり『相手のため』じゃなく、『自分が楽をしたい』だけじゃないですか。
私はそれでは駄目だと思うから、丁寧に対処することを心掛けているんです。
ラレアトが大切だから、彼女を受け止めなくちゃと思うんです。
そして人間は、獣人も含めてですけど、完璧にはなれません。ラレアトだって、本人が望んでも完璧にはなれないでしょう。その事実と向き合っています。
しかしそれは同時に、『自分の思い通りになってほしい』『楽をしたい』と考えてしまってつい感情的になってしまう人間のことを否定するものでもないんです。そう思ってしまうこと自体が<人間の弱さ>であり、人間そのものでもあるんですから。
そのどちらにも、それぞれ適切な対応が求められている。
ラレアトの望みを認めようとしない兎人の長やラレアトの両親をはじめとした、因習に拘る者達がそうであり、そちらについては、少佐が対処してくれているんです。どちらかだけに肩入れすれば問題が解決するわけじゃない。
人間は、過去の事例から学んで、気付いてきた。それにより、少しずつ、少しずつ、前へと進んできた。
そんな先人達の歩みを、私達も実践する。
ラレアトも、長達も見捨てない。双方が折り合える点を探し続ける。
別に、生物の成り立ちの時点でまったく相容れない<異生物>というわけじゃないんです。痛みは伴うかもしれないけれど、折り合える点は必ずどこかに存在します。
『痛みを伴う』
というのが、<肝>ですが。
「コミン、ナクテモ、ヘイキ…♡」
ラレアトが笑顔でそう言うんです。久しぶりの彼女の笑顔でした。
「そうだね。美味しいものは他にもあるよね♡」
私も自然と笑顔になります。そんな私達の様子を見て、レギラとボゼルスも、ホッとした様子でした。彼らも私達を気遣ってくれてたんです。
結局、そういうことですよね。こうやって誰かが気遣ってくれたら嬉しいし、心の支えにもなる場合があるんです。
怒鳴ったり声を荒げたりという人は、要するに自分の思い通りにしようとしてそうならないからただ感情的になっているだけですし。
『お前のためを想って』
なんていうのも、所詮は、
『相手のためを想ってるつもりの自分に酔っている』
だけですし。
その人のことを本当に想っているのなら、その人に適したやり方を提示しなければ意味がありません。それを『面倒だ!』とおっしゃるのなら、やっぱり『相手のため』じゃなく、『自分が楽をしたい』だけじゃないですか。
私はそれでは駄目だと思うから、丁寧に対処することを心掛けているんです。
ラレアトが大切だから、彼女を受け止めなくちゃと思うんです。
そして人間は、獣人も含めてですけど、完璧にはなれません。ラレアトだって、本人が望んでも完璧にはなれないでしょう。その事実と向き合っています。
しかしそれは同時に、『自分の思い通りになってほしい』『楽をしたい』と考えてしまってつい感情的になってしまう人間のことを否定するものでもないんです。そう思ってしまうこと自体が<人間の弱さ>であり、人間そのものでもあるんですから。
そのどちらにも、それぞれ適切な対応が求められている。
ラレアトの望みを認めようとしない兎人の長やラレアトの両親をはじめとした、因習に拘る者達がそうであり、そちらについては、少佐が対処してくれているんです。どちらかだけに肩入れすれば問題が解決するわけじゃない。
人間は、過去の事例から学んで、気付いてきた。それにより、少しずつ、少しずつ、前へと進んできた。
そんな先人達の歩みを、私達も実践する。
ラレアトも、長達も見捨てない。双方が折り合える点を探し続ける。
別に、生物の成り立ちの時点でまったく相容れない<異生物>というわけじゃないんです。痛みは伴うかもしれないけれど、折り合える点は必ずどこかに存在します。
『痛みを伴う』
というのが、<肝>ですが。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる