獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

それしかできないんだ

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「ビアンカハ、ワタシヲ、マッテテクレル……?」

縋るような目で私を見上げ、ラレアトはそう言いました。

「もちろん。いつまでも待ってるよ。ラレアトが来てくれるのをいつまでだって待ってる」

『待っててくれる?』

その問い掛けが出たということは、彼女の中では、今回は仲間達と一緒に次の集落に移る決意が固まりつつあるということでしょうか。それも確定ではありませんけど、私は当然、彼女がそれを選択しても受け止めます。おさや両親や仲間達の干渉によってその決断をさせられた可能性は高いでしょうが、自身の思い通りにならないというのが世の中というものですから。

「私は、何十年も少佐のことを待ったんだよ。少佐も、自分の家族のことでいろいろ自由にできなくて、私は、昔に住んでたところでは彼に選んでもらえないはずだった。だけど何十年も待ち続けて、それで今、彼に受け入れてもらえたんだ。それを思えば、ラレアトのことを待つのだって、できるよ」

きっぱりと言わせてもらいます。

自分の思い通りにはいかなくたって、果てしなく回り道をしたって、結果的には望みを叶えられることだってあるんです。諦めるか諦めないか、その選択をするのも自分自身。少佐を諦めなかったことで私がどんな人生を送っていたとしても、私はそれを間違っていたとは思わなかったでしょうね。いえ、思いたくありません。たとえ後悔はしても、間違いではなかったと思いたい。

その覚悟が、実のある人生を作り上げていくんじゃないでしょうか。

後悔はあっても、無意味ではなかった。

そういう人生を送りたいと私は思います。

「ラレアト、一緒に頑張ろう。私達は、今、同じ時間を生きてるんだ。少佐とは違っても、私はあなたのことが好き。愛してる。一緒にこの世界を生きよう。そして、楽しもう。結局、それしかできないんだよ」

日が暮れていく中、ふと、いい匂いが漂ってきました。見ると、いつの間にか、屋台に、レギラとボゼルスの姿が。本番を前に屋台での調理に慣れるために、時々、こうして実際に調理するんです。

そして、ボゼルスが、

「ドウダイ、タベルカ?」

あの時と同じ葉に包んで蒸し焼きにしたトイラを差し出してきました。それを見たラレアトは、

「ウン!」

嬉しそうに頷きます。

「コッチ、モ、タベタラ、イイ」

レギラも、試しに作った炒め物を出してくれます。それはどちらも、<コミン>は含まれていませんでした。この時期、この辺りではコミンはあまり採れなくなるからでした。

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