276 / 404
第三部
野生の猛獣に勝るとも劣らない
しおりを挟む
けれど、何事もなく世は明けました。店の方も、クレアがちゃんと対応してくれました。
クレアは、お客がいない時には壁にもたれてよく居眠りをしてしますが、お客の気配がするとハッと目を覚まして接客をしてくれます。<猿人>であるがゆえに、地球人ほどは眠りが深くないんでしょう。
地球人は、多くが集まり社会を築き<安心して寝られる環境>を作り出すことで、長時間、まとめて、深い眠りにつくことができるようになりましたけど、野生ではいつ的に襲われるか分かりませんから、地球人のように油断しきった睡眠はとれません。中には、イルカのように、泳ぎ続けるために脳の半分ずつを交代で眠らせる<半球睡眠>と言われる能力を身に付けた者もいるくらいですから。
それを考えるとクレアが昼間でもよく居眠りをしているのは当然でしょうね。基本的には昼行性でありつつ、『寝られる時に寝る』のは基本ということでしょうし。
メイミィ達兎人もまだまだ野生を強く残しているものの、<見張り>を立てて安全を確保して寝るという習慣を編み出したことで、まとまって深い睡眠をとる習慣が身に付きつつあるんでしょう。メイミィは特にそれが強かっただけでしょうね。
ちなみに<見張り>は、それなりに歳を経て力を付けた雌が担当することが多いそうです。戦闘には必ずしも向いていない兎人ですが、ゴヘノヘ戦の際にもその力を発揮してくれたように猛然と穴を掘ることができるくらいには高い身体能力とスタミナを持ち、特に脚力は地球人ではまったく勝てるようなレベルじゃありません。一見しただけではひ弱そうに見えるメイミィやラレアトでさえ、垂直跳びは優に二メートルを超え、私達が知る<地球人の世界記録>でも八十センチ強というそれとはまったく比較にならないんです。たぶん、素の身体能力だけで勝負したら、私は手も足も出ないでしょう。
そんな兎人のキックをもろに受ければ、地球人なんて簡単に壊れてしまうに違いない。ただの<骨折>とかじゃなく、内臓も何もかも破壊されてそれこそ『壊れて』しまうと想像に難くない。
なので、防御に徹した兎人は、決して侮ってはいけない相手なんです。その可愛らしい見た目に騙されてはいけない。歳を経て完成された肉体を獲得し覚悟が完了した一部の雌が放つオーラは、きっと、野生の猛獣に勝るとも劣らないでしょうね。雌に比べるとおとなしい雄でさえ、私では勝てないと思います。
メイミィやラレアトには、そこまでの才能は感じられませんが。
などという余談はさて置いて、
「タダイマ」
そう言って帰ってきたのは、フロイなのでした。
クレアは、お客がいない時には壁にもたれてよく居眠りをしてしますが、お客の気配がするとハッと目を覚まして接客をしてくれます。<猿人>であるがゆえに、地球人ほどは眠りが深くないんでしょう。
地球人は、多くが集まり社会を築き<安心して寝られる環境>を作り出すことで、長時間、まとめて、深い眠りにつくことができるようになりましたけど、野生ではいつ的に襲われるか分かりませんから、地球人のように油断しきった睡眠はとれません。中には、イルカのように、泳ぎ続けるために脳の半分ずつを交代で眠らせる<半球睡眠>と言われる能力を身に付けた者もいるくらいですから。
それを考えるとクレアが昼間でもよく居眠りをしているのは当然でしょうね。基本的には昼行性でありつつ、『寝られる時に寝る』のは基本ということでしょうし。
メイミィ達兎人もまだまだ野生を強く残しているものの、<見張り>を立てて安全を確保して寝るという習慣を編み出したことで、まとまって深い睡眠をとる習慣が身に付きつつあるんでしょう。メイミィは特にそれが強かっただけでしょうね。
ちなみに<見張り>は、それなりに歳を経て力を付けた雌が担当することが多いそうです。戦闘には必ずしも向いていない兎人ですが、ゴヘノヘ戦の際にもその力を発揮してくれたように猛然と穴を掘ることができるくらいには高い身体能力とスタミナを持ち、特に脚力は地球人ではまったく勝てるようなレベルじゃありません。一見しただけではひ弱そうに見えるメイミィやラレアトでさえ、垂直跳びは優に二メートルを超え、私達が知る<地球人の世界記録>でも八十センチ強というそれとはまったく比較にならないんです。たぶん、素の身体能力だけで勝負したら、私は手も足も出ないでしょう。
そんな兎人のキックをもろに受ければ、地球人なんて簡単に壊れてしまうに違いない。ただの<骨折>とかじゃなく、内臓も何もかも破壊されてそれこそ『壊れて』しまうと想像に難くない。
なので、防御に徹した兎人は、決して侮ってはいけない相手なんです。その可愛らしい見た目に騙されてはいけない。歳を経て完成された肉体を獲得し覚悟が完了した一部の雌が放つオーラは、きっと、野生の猛獣に勝るとも劣らないでしょうね。雌に比べるとおとなしい雄でさえ、私では勝てないと思います。
メイミィやラレアトには、そこまでの才能は感じられませんが。
などという余談はさて置いて、
「タダイマ」
そう言って帰ってきたのは、フロイなのでした。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】私のためを思って? 勘違い女!二度とそのツラ見せんなっ!
BBやっこ
恋愛
友達だ、親友だと都合の良いようにとる困った女付き合いがあった。近所なのだ。
行動力が行きすぎる時もあるものの、基本いい子なはず。ワザとじゃないんだろうけど、困ることもしばしば。そして、事件は唐突に。
暴露である。犯人、確保。品物は返却、勝手に売った金額も相手にそのまま返される。
めでたしなのか?まあそうなのだろう。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です
灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。
顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。
辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。
王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて…
婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。
ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。
設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。
他サイトでも掲載しています。
コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
緑の魔法と香りの使い手
兎希メグ/megu
ファンタジー
ハーブが大好きな女子大生が、ある日ハーブを手入れしていたら、不幸な事に死亡してしまい異世界に転生。
特典はハーブを使った癒しの魔法。
転生した世界は何と、弱肉強食の恐ろしい世界。でも優しい女神様のおかげでチュートリアル的森で、懐いた可愛い子狼と一緒にしっかり準備して。
とりあえず美味しいスイーツとハーブ料理を振る舞い、笑顔を増やそうと思います。
皆様のおかげで小説2巻まで、漫画版もアルファポリス公式漫画で連載中です。
9月29日に漫画1巻発売になります! まめぞう先生による素敵な漫画がまとめて読めますので、よろしくお願いします!

マインドファイターズ
2キセイセ
ファンタジー
"心物(しんぶつ)"
選ばれた人だけが持っているそれは、心の写し身であり、何かしらの特殊な力がある不思議なものである。
その心物に選ばれた、少年。
アルス・ターネスト。
ある朝。アルスが目覚めた時、自分の記憶を無くしていた。なおかつ外には死しか待ち受けていないという絶望的な状況。
その状況を、近くにいた、心物に選ばれた男共に何とか振り切ったアルスは自分と同じ、心物に選ばれたものだけが集う溜まり場で、様々な事件に巻き込まれ、様々な困難に立ち向かってゆく………。
背徳者 暴君と呼ばれた皇帝
月島 成生
歴史・時代
ローマの五代皇帝、ネロ。
後に暴君とされた彼の治世は、晩年こそ荒れはしたが、最初期の5年はローマにおいてもっとも平和と評されることもあった。
十七歳で帝位についた、美貌の少年皇帝。
聡明なネロを壊れさせたもの、それはなにがあっても隠さなくてはならない、自身の秘密にあった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる