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第三部
予感
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そんなこんなで、日が暮れてきた頃、
「ほら! 解散解散! みんな帰って!」
私は、ゴヘノヘ神輿に上って、手を叩きながらそう声を張り上げました。
「オ~!」
「ハ~イ」
観光客よろしく祭の会場に集まっていた獣人達はようやくそれぞれの集落に帰っていきます。本当は夜も見回りしたいところですが、さすがにそれだけのリソースもなく。
実際、梟人は夜行性、山猫人もどちらかと言えば夜の方が活動的になる種族なので、夜の間に入り込んだりしてるみたいです。
とは言え、梟人は割と無茶はしないし、山猫人はただイチャイチャするだけ(なにやっとんじゃワリャあ~! って話ですが)なので、そんなにダメージもないでしょう。
いずれにせよ、取り敢えず無人になった会場を確認し、ラレアトと一緒に私も会場を後にしました。
そして、ラレアトの集落に戻る途中で、
「ココマデデ、イイヨ。バイバイ」
ラレアトがそう言うので、私も、
「そう? じゃあ、また明日♡」
手を振って彼女と別れて、よろずやに帰ります。
「……」
でも、別れ際の彼女の表情。明らかにいつもの彼女じゃなかった。何か思い詰めたように沈んでいるのを、私は感じたんです。そこで私は、急いでよろずやに帰り、
「メイミィ、トーム、少佐が帰ってきたら伝えて」
と、二人に伝言を頼んで、獣蟲の目を利用したランタンを手に、そのままよろずやを飛び出していきました。
『思い過ごしならそれでいい……でも……』
夕暮れの森を走り抜け、ラレアトの集落を目指します。そして、すっかり森が暗闇に包まれた頃に辿り着いて、ラレアトの家を訪ねて、
「ラレアト、帰ってきてる…?」
彼女の両親に問い掛けました。すると両親は、
「イエ…」
「マダ、デス、ケド……?」
との返事。
『やっぱりか……!』
そう思って振り返ったところに、
「ビアンカ……?」
集落の中に掲げられた松明の灯りに照らされたラレアトが、驚いた様子で私を見ていたんです。
それに気付いた瞬間。私は体の力が抜けて……
「よかった……帰ってきたんだ……」
呟く私に、ラレアトはハッとなって、
「カエロウカ、ドウカ…マヨッテタ……」
視線を逸らしながら、口にしたんです。
「そうか……でも、帰ってきてくれてよかった……」
安堵した私の背後で、
「ラレアト……」
彼女の両親も家から出て心配げに視線を向けていました。
「ラレアト……!」
強い口調で彼女に声を掛けようとした母親を制して、私は、
「ここは、私に任せてください」
と告げて、ラレアトと一緒に、集落の外れに行ったのでした。
「ほら! 解散解散! みんな帰って!」
私は、ゴヘノヘ神輿に上って、手を叩きながらそう声を張り上げました。
「オ~!」
「ハ~イ」
観光客よろしく祭の会場に集まっていた獣人達はようやくそれぞれの集落に帰っていきます。本当は夜も見回りしたいところですが、さすがにそれだけのリソースもなく。
実際、梟人は夜行性、山猫人もどちらかと言えば夜の方が活動的になる種族なので、夜の間に入り込んだりしてるみたいです。
とは言え、梟人は割と無茶はしないし、山猫人はただイチャイチャするだけ(なにやっとんじゃワリャあ~! って話ですが)なので、そんなにダメージもないでしょう。
いずれにせよ、取り敢えず無人になった会場を確認し、ラレアトと一緒に私も会場を後にしました。
そして、ラレアトの集落に戻る途中で、
「ココマデデ、イイヨ。バイバイ」
ラレアトがそう言うので、私も、
「そう? じゃあ、また明日♡」
手を振って彼女と別れて、よろずやに帰ります。
「……」
でも、別れ際の彼女の表情。明らかにいつもの彼女じゃなかった。何か思い詰めたように沈んでいるのを、私は感じたんです。そこで私は、急いでよろずやに帰り、
「メイミィ、トーム、少佐が帰ってきたら伝えて」
と、二人に伝言を頼んで、獣蟲の目を利用したランタンを手に、そのままよろずやを飛び出していきました。
『思い過ごしならそれでいい……でも……』
夕暮れの森を走り抜け、ラレアトの集落を目指します。そして、すっかり森が暗闇に包まれた頃に辿り着いて、ラレアトの家を訪ねて、
「ラレアト、帰ってきてる…?」
彼女の両親に問い掛けました。すると両親は、
「イエ…」
「マダ、デス、ケド……?」
との返事。
『やっぱりか……!』
そう思って振り返ったところに、
「ビアンカ……?」
集落の中に掲げられた松明の灯りに照らされたラレアトが、驚いた様子で私を見ていたんです。
それに気付いた瞬間。私は体の力が抜けて……
「よかった……帰ってきたんだ……」
呟く私に、ラレアトはハッとなって、
「カエロウカ、ドウカ…マヨッテタ……」
視線を逸らしながら、口にしたんです。
「そうか……でも、帰ってきてくれてよかった……」
安堵した私の背後で、
「ラレアト……」
彼女の両親も家から出て心配げに視線を向けていました。
「ラレアト……!」
強い口調で彼女に声を掛けようとした母親を制して、私は、
「ここは、私に任せてください」
と告げて、ラレアトと一緒に、集落の外れに行ったのでした。
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