獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

集落の外

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こういう時、地球人は、

『子離れができていない』

と言いますが、ラレアトの両親の場合は、あくまで、

<我が子が自分達の集落、つまり自分達が生きる世界の外に出てしまうことに対する不安>

なんでしょうね。ラレアトの両親も、決して彼女に対して過干渉なタイプではありませんし。

地球人の場合だと、それこそ外宇宙へ惑星探査に出るようなものなのでしょう。それも、外宇宙での惑星探査が始まった最初期の段階で。親からすれば生きて帰れる保証のない冒険に出るようなものと。

すでにそれが何度も繰り返されて普通に<仕事の一つ>として認知されていた私達の時代でも、私を含め親に反対されたメンバーはいます。もう立派に成人していたにも拘らずです。だからラレアトの両親の態度も何も不思議じゃないと私も思います。

でも、ラレアトの仲間達も、もうすでに<集落の外>に出て活動してるんです。ゴヘノヘ襲来の時もそうですし、今、祭の準備をしていることもまさにそれ。兎人とじん達自身の活動範囲そのものが大きく広がりつつあるんです。ラレアトの判断もその一つでしかないでしょう。

ただ、兎人とじん達自身がその事実に気付かなければ、ラレアトの言っていることも理解はされないでしょうね。

私個人は、ラレアトの味方をしたい。でも、集団というものを考えた時、おさやラレアトの両親の言っていることも決して間違っているわけじゃない。

結局、この時は双方、まったく歩み寄りを見せることができず、結論は持ち越されることになりました。

でも同時に、

「ラレアト、これはもう、コミンを食べなくても大丈夫だってことをみんなに納得してもらうしかないんじゃないかな」

私の言葉に、彼女は、

「ワカッタ……」

と言ってくれました。

「ラレアトもこう言っています。取り敢えず祭が終わるまで、彼女がコミンを食べなくても何ともないかどうかを見守ってあげてはどうでしょうか?」

私は、おさ達に向けて提案します。

「……」

これについても明確な返答はもらえませんでしたが、さすがにすぐには決断もできないでしょうし、まずはこれで良しとします。



コミンを食べなくても大丈夫なことを示すためにラレアトは集落に残り、私はよろずやに戻って、少佐に報告しました。

ちなみに、メイミィは、日勤ということになったので、自宅からの通いとなって、今日はもう帰っています。

「そうか。ラレアトの気持ちも尊重したいところだけれど、おさやご両親、集落の意向も蔑ろにはできないからね。私も明日、おさと話し合ってみることにしよう」

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