獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

引継ぎ

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『キョウ、ハ、マダ、メイミィ、キテナイ?』

ラレアトがそう問い掛けてきたことで、私は、

「メイミィはよろずやで働いてもらうことになったんだ」

と、正直に応えました。変に隠してもすぐにバレますからね。するとラレアトは、

「エ? ズルイ! メイミィバッカリ、ズルイ! ワタシ、モ、ビアンカ、ト、イッショ、ニ、イタイ!」

って感じで猛抗議。

でも、実はメイミィについては、彼女と同じ仕事をできるコが育ってきたから、今後、新しい仕事をしてもらうつもりで、すでに引継ぎも終わってる状態だった。そこに『よろずやで働きたい!』ってことになったから、ちょうどいいタイミングだったんですよね。

ただ、ラレアトは、メイミィと違って人に教えるのはあまり上手じゃなくて、後進も育ってなかった。となると、すぐには彼女をよろずやに、とはいかない。

だから私は、

「ラレアトの仕事を代わりにやってくれる人が現れたらね」

と応えました。すると彼女は、

「ブーッ!」

頬を膨らませそっぽを向きます。その様子がまた可愛くて。ただ、仕事は蔑ろにするわけにはいきませんからね。メイミィはたまたま引継ぎが終わってたからタイミングよく始められただけです。

もちろん、仕事を蔑ろにできないのと同時に、ラレアトの気持ちも蔑ろにはできません。

「今、ラレアトと同じ仕事を始めたコ達に、ちゃんと教えてあげてほしい。それができたら、ラレアトもよろずやの仕事できるよ」

いずれ、店番だけじゃなく商品の加工や在庫管理のための人員も確保する必要があるのは分かってたので、そう言いました。今すぐでなくてもいいから。

「ム~……!」

不服そうな彼女と目線の高さを合わせて、

「お願い。これは大事なことなんだ」

と告げた後、

「それに、ここに来れば一緒にいられるしさ。逆にメイミィは私がこっちに来てる間は一緒にいられないわけで」

そう告げると、

「ア……!」

ラレアトもハッとなりました。そして、

「ジャア、ビアンカ、ワタシダケ!」

ここでなら私を独占できることに気付くと、途端に機嫌が直って。

現金だなあ。



もし、ラレアトもよろずやに勤めたいなら、ちゃんと後進を育ててもらわなくちゃね。そういう部分は少し苦手かもしれないけど、急がないからゆっくりとでいいから確実にそういうことをこなすのを学んでほしい。

焦らせて、仕事を雑にこなすようになったりしたら意味がないですから。

地球人でもいますよね。急ぐあまりに仕事が雑になる人。だったら急がせないのが無難だと思います。

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