獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

大切な友達

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私は、メイミィの気持ちを受け入れることはありません。でも同時に、彼女の気持ちを否定するつもりもないんです。だからネルラが彼女の気持ちを否定しようというのなら、私はメイミィの側に立ちます。

「私とニャルソが関係を持っても、子供が生まれる可能性はないよね? だけどあなたは、ニャルソの気持ちは受け入れろと言う。だとしたら、同じく子供ができる可能性のないメイミィの気持ちだって、否定されるべきものだとは私は思わない。

私はあくまで、少佐のことを愛しているし、メイミィのことは、<大切な友達>だと思ってるから、パートナーとしては受け入れられないというだけ。メイミィが私を好きでいてくれるその気持ちそのものを、否定はしない。メイミィはすごくいいだよ。彼女の気持ちそのものは、嬉しいよ。だけど私は、パートナーとしては受け入れられない。私の方の結論はそれで出てるし動かない」

恋愛ものでは、えてして、ゼロか百かで語られることが多いですけど、私はそういう考え方では納得できませんでした。『好きだから付き合いたい』という気持ちはいかなるものよりも尊くて受け入れられるべきものであるなら、ストーカーの気持ちだって受けれられないとおかしいですよね? でも現実はそうじゃない。

自分の気持ちが受け入れられなかったら何もかもご破算にして人間関係そのものをなくしてしまおうなんて、

<現実と向き合うこともできない弱い心>

を美化してるだけだとしか思えません。

私は、少佐が、もし、婚約者の方を選んだとしても、彼の前からいなくなりたいとは思いませんでした。

『少佐のお嫁さんになる』

ことだけが私の存在のすべてではないからです。私には、恋愛以外にも、<積み重ねてきたもの>があります。軍人としてのキャリアもその一つです。まあそちらについては、今の私は<オリジナルのビアンカ・ラッセ>ではないこと、軍人としての身分を保証するものが何一つなくなってしまったことで失われてしまいましたが、それでも、<軍人として積み重ねてきた気概>については、失われてはいません。

でもその上で、少佐が私を受け入れてくれたから、私は彼とパートナーになることを選びます。

もしかしたら、少佐が私を受け入れてくれないと確定したら、メイミィにも可能性はゼロではなかったでしょうけど、それはそれで、

『少佐がダメならメイミィに』

という部分で『それでいいのだろうか?』と考えてしまって、すぐには割り切れなかったでしょうけど。しかも、ラレアトもメイミィと同じく私を想ってくれてますし、今度はそっちの問題がでてきますね。

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