獣人のよろずやさん

京衛武百十

文字の大きさ
上 下
250 / 404
第三部

人口爆縮

しおりを挟む
野生の生き物にも、同性同士でカップリングする事例があることは知られています。地球人は特にそれが多いとは言われていますが、それ自体、

『人間という種が増えすぎたことで、数を調節する本能が働いている』

とする説もあります。その点では、<生涯非婚者>や<子供を持たない夫婦>が増えているのも同様の働きだと見られているようです。

しかし、同性婚や非婚や子供を持たない夫婦の増加について、

『種の本質に反する!』

などと言って危険視している人もいるそうですが、私は少佐の子供が欲しいと思いますし、他にも、愛する人との間に子を生すカップルも普通にいて、しかも、地球人類の増加傾向は、緩やかながら続いているそうです。

かつて、<人口爆縮>と言われる、地球人類の数が猛烈な勢いで減少し、

『百年以内に地球人類は滅びる』

とまで言われた時期もあったものの、ロボットの高性能化による育児の負担の軽減、恒星間航行技術ハイパードライブの実用化に伴う、

<太陽系外の新天地への期待>

および、

<種の存続の危機に対する本能的な防衛反応>

といった要因が重なってか、すんでのところで減少に歯止めがかかり、それ以降はゆるやかに増加に転じたそうです。それから千年以上の時間が過ぎ、今では、一説によると二百億人以上とも言われる数に。

もっとも、いくつもの惑星に入植しているため、それぞれの惑星の人口密度そのものは、多くても十八世紀頃の地球と変わらない程度ですが。労働力はロボットが補ってくれるので、無理に人口を増やす必要がないんです。

飛び抜けて人口が多い<地球>でさえ、現在は五十億人前後で、しかも新しい入植可能な惑星が発見される度に移住を希望する人が出ることもあり、減少傾向にあるそうです。

加えて、<都市鉱山>の効率化、再資源化も進み、地球の資源が枯渇するまでの期限は、どんどん伸びているとのこと。なにしろ、ロボットなんて、人間が命じたら自分の足で再資源化工場へ赴いてくれるんですから。老朽化して再資源化が決まった自動車に、他の再資源化が決まった家電製品やら廃材やらを積み込んでということさえ可能。

人間は、ロボットが運転する自動車に運行責任者として同乗して、それを見届けるだけでいい。再資源化工場に廃材とかを持ち込めばタクシーの運賃にも使えるポイントがもらえるので、自動車ごと再資源化工場に放り込んだら人間はタクシーで帰ってくればいい。なんなら、そのついでにもらったポイントでランチを楽しんだりもできる。

そうやって便利さも損なわず省資源化が行われていることで、無理せず循環社会が成立しているわけですね。

しおりを挟む

処理中です...