獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

試用期間

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「というわけで、両親の許可も下りましたから、一応、研修ということで」

祭の準備については今日の分の作業も終わり、私はメイミィを連れてきました。レミニィは自宅に帰ってます。<ホコの実>は自宅にもあるので、発作が起こりそうになってもすぐに対処できますから。

「ご両親の許可があるならうちとしては大きな問題はないけど、大丈夫かな?」

少佐が穏やかに問い掛けると、

「大丈夫です! やれます!」

メイミィは拳を握り締めて前のめりになって応えました。

「本人がやりたいって言ってんなら、やらしてみりゃいいじゃねえか。試用期間を設けてよ」

伍長はまあそう言うだろうなって反応で、

「ヨロシクネ、メイミィ」

クレアは完全にもう<よろずやの仲間>として受け入れてしまっています。もともと、頻繁に顔を合わすので親しくはなってたんですけど。

「はい! よろしくです!」

と、メイミィもすっかりその気で。

なので伍長の言うとおり、十日間の<試用期間>を設けて、働いてもらうことになりました。

「ヨロシク」

フロイも、少し戸惑った様子ながら挨拶しました。でも、地球人のように握手とかはしません。兎人とじん梟人きょうじんを苦手としていることはここではよく知られたことであり、相手を怖がらせないために敢えて距離を取るのは普通のことなんです。だからここでは、地球人の社会とはかなり異なったマナーや<社交辞令>というものが出来上がっていくでしょうね。

まあそれはさておき、早速、今日はまず<研修>ですね。

と言っても、彼女はよろずやの常連であり、店に訪れてそのまま話し込んで、私達の接客の様子もずっと見てきてるので、教えることと言えば商品についてくらいしかありません。何度も言うように金銭の授受がないので、その辺りを覚える必要もありませんから。

すると、私が商品について説明してるところに、

「イラッシャイマセ」

<お客>が来て、フロイが応対しました。

「コンバンワ♡」

笑顔(本人はそのつもり)を浮かべて手を振ったのは、確か、<ネルラ>。ニャルソと仲のいい山猫人ねこじんの雌のネルラでした。

挨拶した後、ネルラは迷うことなく川魚の干物を二つ手に取り、

「コレ、モラッテクネ♡」

と告げました。

「マイドアリ」

フロイが応えると、

「ア、カワリニ、コレ、アゲル」

そう言って彼女がボディバッグのようにして体に掛けていた袋から取り出したのは、木の実でした。

「ホコの実……」

二人のやり取りを見ていたメイミィが呟きます。そう。ネルラが干物の代わりとして提供してくれたのは、ホコの実だったんです。

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