獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

怪我の功名

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少佐がスキンシップを図ってくれるようになったのは嬉しいんですけど、だからと言ってニャルソをよろずやの従業員にというのは、別の話です。

「私は彼とは、絶対、そんな関係にはなりませんから!」

伍長の前で、改めてそう宣言させてもらいました。そんな私に、伍長は、

「は? 何言ってんだお前。誰がそんなこと言ったよ」

呆れ顔で言います。ああもう! この態度!

「昨日、『ヤらせりゃいいじゃねえか。減るもんじゃなし』とか言ったじゃないですか!」

私が強く言うと、伍長は、

「ぶあっはははは!」

腹を抱えて笑い出したんです。

「お、おま…! あれをそういう意味だと思ったのかよ!? 俺はただ単に『よろずやの仕事やらせりゃいいじゃねえか』って意味で言ったんだぜ!? お前がそんなことばっか考えてっからそう聞こえただけじゃねえか!!」

「な……っ!?」

伍長の言葉に、私は、カーッと顔が厚くなるのを感じました。まさかホントにそういう意味で……? いや、確かに、話の流れ的にはそう受け取れなくもないですけど……!

「わ、私がニャルソに関係を迫られてるのは伍長だって知ってるじゃないですか!? それであの流れだったらそっちに聞こえますよ!」

とつい言い返してしまいました。

だってそうじゃなきゃ、少佐までそういう勘違いをしてしまったってことになりますよね!? 私はともかく少佐をそんな風に貶めるのは許せません!

と思ってたんですけど、当の少佐が、

「……そうか、言われてみればそうだな……これは僕の失態だ……」

とか言って、認めてしまったんです。

「しょ…少佐ぁ~……!」

ハシゴを外された形になってしまった私は、自分でも分かるくらいに情けない声を上げながら少佐に縋り付いてしまいました。

そんな私を見て、伍長は、

「だが、まさに<怪我の功名>じゃねえか。今までそんな風に気安くできなかったんだろ? それでいいじゃねえかよ。何が問題なんだ? お前らは無駄に考えすぎなんだ。俺達はもう<軍人>じゃねえ。しかもここは<地球人の社会>じゃねえんだ。いいと思った相手には遠慮なくアタックして、上手くいきゃそれでいいし、ダメなら潔く諦めりゃいいって社会じゃねえか。

それをお前らはいつまで経ってもウジウジグダグダ難しく考えやがって、見ててイラつくんだよ! 中学生のガキじゃねえんだ! さっさとくっついちまえ! ヤっちまえ! ヤって体の相性が悪けりゃとっとと別れりゃいいんだ! いい大人だろうが! ガキができたら俺も面倒見てやる! とにかくヤれ!!」

そうまくし立てたのでした。

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