獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

プンスコ!

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別に女性だって、

『イケメンなら誰でもいい』

わけじゃないんです。外見が整っていれば確かに見てる分には悪くないですけど、それでも、

<好みの外見>

というのはあるんです。男性だってそうですよね? 整った外見を持つアイドルや女優でも、好みの外見を持つのとそうじゃないのがいますよね? そういうことです。

加えて、いくらイケメンでも、人間性がまったく受け入れられない相手なら、気持ちも冷めます。

『人間性の面で生理的に無理』

っていう相手だっているんです。私にとってはそれが<ニャルソ>です。外見そのものは必ずしも嫌いなタイプではない。でも、彼の人間性と言うか価値観と言うかは、私にとっては生理的嫌悪感すら覚えるものなんです。

まあ、私がニャルソに対して感じているものに比べれば、伍長は決してクレアを嫌ってはいません。むしろ愛してくれていると思います。ただ、その<愛>は、自身の肉親、つまり<妹>のように彼女を想っているような印象があるんです。

『<家族>ではあるけれど、<伴侶>としては見られない』

とでも言えばいいでしょうか。

もちろん、伍長の内心について私が完全に理解できているわけじゃありません。彼は彼であり、私は私であって、<別の人間>なんです。

『他人の気持ちが分かる』

なんていうものは幻想に過ぎないことが、分かっています。人間は他人を完全に理解することはできない。それは厳然たる事実。私がどれほど愛そうと、少佐のことを完全に理解できるわけじゃないのと同時に、少佐が私のことを完全に理解できるわけじゃないのは、事実なんです。

少佐が私のことを完全に理解してくれているのなら、今すぐにだって結ばれたいと思ってることを後回しにするはずありませんから。

そして私も、少佐が、私の気持ちに気付いてくれているのに決断できない本当の理由を、理解できません。私が少佐の立場なら、きっと遠慮なんかしません。

少佐は、地球の名家<久利生くりう家>の嫡男としての立場がありました。だから、親が決めた<許嫁候補>さえいたそうです。<候補>とは言いつつ、それは正式に発表されているわけじゃないというだけで、事実上の<既定路線>だった。よほどのことがない限りその許嫁との結婚は、動かしがたいものだったそうです。

ですが、そんなのは、<オリジナルの久利生遥偉くりうとおい>の事情。その記憶や人格を受け継いでいても、今の少佐は、<別人>なんです。地球の久利生くりう家とは何の関係もない。そもそも地球に変える手立てもない上に、おそらくもう私達が遭難してからは数千年の時間が経っている可能性さえある。

なのに少佐は、決断してくれない。

それが私には理解できないんです。

プンスコ!

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