獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

何でも許されるわけじゃない

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伍長とクレアの関係については、二人の問題なので私が口出しすることじゃないと思います。思うんですけど……

「ユキ~♡」

お風呂から上がった伍長が、自分に抱き付いてるクレアの体を拭いてあげていました。もちろん、上がった段階である程度は拭いているはずですけど、仕上げ拭きとしてですね。<猿人>であるクレアはほぼ全身が毛皮に覆われているので、簡単には拭き切れないんです。

そうして伍長が自分の体を拭いてくれることが、クレアにはとても嬉しいことらしくて。

「あんまり抱き付くな。拭きにくい」

伍長はつっけんどんな感じでそう言いますが、クレアは動じません。彼女にとってはそれほどきつい言い方に思えないんでしょうね。

実際、伍長のことをこれまで見てきた私にとっても、決して不機嫌なそれじゃないことは分かります。ただ本当に拭きにくいからそう言ってるだけなんでしょう。

そして、クレアを委縮させるつもりもない。

一方クレアは、自身の胸を彼の体に押し付けたり、足を絡ませて腰を擦り付けたりと、やや性的にアピールするような仕草も見せます。今のところは意図してそうしているというよりも、ただ気持ちいいからなんでしょうね。こうしているうちにきっと性的に目覚めていって、やがて彼を誘惑しようとするんじゃないでしょうか。

こういう時、昔は男性にとっては<役得>と言われて『嬉しいこと』とされてきたそうですが、私達がいた頃の地球人の社会では、男性側が望んでいなければそれも立派に<セクハラ行為>に当たり、時には訴訟まで起こされることがありました。

それでもなお、

『ご褒美じゃん』

などと言って羨ましがる人もいたそうですが、女性男性関係なく『嫌なものは嫌』なはずですから、私にはむしろそんなことを言う人の神経の方が理解できません。

まあ確かに、

『ヤれれば誰でもいい』

と考えるような男性がいることも事実なのかもしれませんが、だからといって全員が全員そうだと決めつけるのも違うんじゃないでしょうか。

だからこそ、伍長の気持ちとしてはどうなんでしょう? 彼は、クレアと結ばれることを望んでいるのでしょうか?

クレアの気持ちを考えれば、伍長には受け入れてほしいと思います。だけど、それは伍長自身の気持ちを蔑ろにしてまで認められるべきこととは私は思わない。

私だって、少佐となら結ばれたいと思ってます。少佐も私のことを悪からず想ってくださってるのも分かるんですが、なかなか先には進めない。だけど、ニャルソに想いを寄せられているのは、受け入れ難い。ニャルソは、間違いなく<イケメン>ですけど、だからって、

『イケメンなら何でも許される』

わけじゃないんです。

好きでもない女性から迫られる男性にも、『女なら何でも許されるわけじゃない』と思う人はいるんじゃないですか?

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