獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

最後の防衛ライン

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こうして夜を迎え、夕食の用意を済ませた時、

「オカエリ」

「ただいま」

店の方でそうやり取りが聞こえました。

「少佐♡ おかえりなさい!」

私も飛び出して出迎えてしまいます。

「ただいま。会場の方はどうだった?」

店から住居スペースへと上がりながら尋ねてくる少佐に、

「はい。レギラとボゼルスが、使う屋台で揉めたので、<角相撲>で決めてもらいました」

報告すると、

「ああ、メイミィがおさに許可状をもらいに来た件だね。そのすぐ後に僕もおさに会ったから、聞いたよ」

とのこと。さすが少佐です。現場にいなくても状況を把握してる……!

そうして、夕食をとりながら私は今日の報告を行いました。

でも、そうやって夕食が終わりかけたその時、

獣蟲じゅうちゅうだ!!」

店の外から、伍長の声。瞬間、

「私も行く! ビアンカ、バックアップ!」

少佐が声を上げながら走り出し、ナイフを手に裏口から外へと飛び出しました。

以前にも言いましたが、この<よろずや>は獣蟲じゅうちゅうの生息域と獣人達の集落がある場所の間にあり、私達が<防衛線>を形成しているんです。

伍長が獣じみた嗅覚で獣蟲じゅうちゅうの接近を察知し迎撃するのが、完全に定着しています。

私は、もし、二人が突破された場合の最後の防衛ライン。

私達が突破されれば、ノーラ達が危険に曝される。だから確実に撃破しなければならない。

「でえええあっ!!」

「ふっ!!」

一応、オイルランプの灯りを向けることで多少なりとも光をと思うものの、人間の目にはほとんどただの闇にしか見えない森の中で、伍長と少佐の声と、何かが激しく動き回ることで茂みが立てる音が響いています。

正直、二人なら負けることはないと思うものの、万が一ということはいつだってあります。私も元軍人。それは覚悟しているつもりです。

でもそこに、木の上を移動する気配。

「があっ!!」

咆哮の後で、

「ギ…ギギ……ッ ギ……」

獣蟲じゅうちゅうの鳴き声。断末魔のそれでした。

それからしばらくして、森の中から、三人の人影。

少佐と、獣蟲じゅうちゅうを肩に担いだ伍長と、クレアでした。木の上を移動して駆け付けたのは、彼女だったわけですね。

<猿人>であるクレアは、木の上を自在に移動するために、地球人ではおよそ到達できない身体機能を持っていました。オランウータンで握力は約二百キロと言われてますから、おそらくそれと同等レベルでしょう。私達の中で身体能力で彼女に勝てるのは、伍長だけです。なにしろ伍長は、幼い頃に医師から、

「ゴリラ並みの筋力です」

と言われたそうですしね。

握力は約五百キロと言われるゴリラ並みと。

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