獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

そういう人達のコミュニティ

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そんなこんなで屋台の配置も決まり、ラレアトが筆記媒体に書き込んでいきます。

『やれやれ、ようやく一段落ですか』

私がそう思ったところに、今度は、

「ビアンカ~♡」

鼻にかかった甘い声。瞬間、私の背にゾワリと悪寒が走り抜けます。

「ニャルソ!?」

そう、ニャルソでした。私を<雌>として狙ってる、山猫人ねこじんの雄。山猫人ねこじんは、雄も雌も、パートナーがいてもチャンスと見れば他の雌や雄とも関係を持つ、<乱交型の繁殖>を行う種族でした。もっとも、ここにはまだ厳密な<結婚制度>というのがないので、山猫人ねこじん以外の種族も、大なり小なり似たようなことはあるんですけど、山猫人ねこじんは特にオープンなんです。

しかもパートナーも、それを咎めない場合が多い。

地球人の感性を持つ私からすればとんでもない話ですけど、実は、地球人の中にも、そういうのを容認しようと考える人はいて、そういう人達が多く入植している惑星では、それに向けて自治権を獲得し、自分達独自の法整備を行おうとしていたりするらしいとも。

私には理解できない感覚とはいえ、新しい惑星への入植には、そういう目的もあるんです。独自の価値観を持つ人達が集まって、独自の文化を築いていくという。

すでにそういう形で独自の考え方で運営されている惑星もいくつかあります。

中には、

『科学文明を一切否定しよう』

的な極端なものさえ。

それ以前にも、AIやロボットを否定して排除しようとする人達はいて、そういう人達のコミュニティもいくつもできたことはありましたが、その多くが頓挫していたりします。

だって、いくらAIやロボットを否定したって、今の時代、そのすべてを排除して人間は生きていけないんです。医療だって、AIやロボットなしでは成り立たない。

だから、AIやロボットを否定する人達の中でも、医療用を含めたすべてのAI及びロボットを否定しようという層と、医療用をはじめとしたどうしても必要なものについては認めていこうという層に分かれてしまって対立し、行政が成り立たなくなって瓦解したコミュニティはいくつもありました。

なのに、

『自分達だけは上手くいく』

と考えて、新しくそういうコミュニティが、できては消えていったんです。

しかも、地球人がようやく恒星間航行技術ハイパードライブを実用化して太陽系外に進出したばかりの頃には、実際に惑星への入植が始まるのを待ち切れなかった人達が、スペースコロニーで、

『AIやロボットに頼らないで活きられる社会』

を実現しようとして大変な事態に陥ったということもあったんです。

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