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第三部
プライド
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ラレアトが木の匙を、<ボゼルスのトイラ>に触れさせると、ほとんど抵抗なくするりともぐりこんでいきました。その部分でもラレアトが知るトイラとはまったく別物だったでしょうね。だから彼女も、試してみる気になれたんでしょう。その味を。
「ウ~……」
さすがに興味は惹かれてもちょっとまだ躊躇いはあるけれど、ラレアトは勇気を振り絞って匙を口に運ぶ。そして味わうと、
「!?」
カッと目を見開いて、
「ン、マァ~イ!」
声を上げました。
「オイシイ! オイシイヨ! トイラ、ケド、ンマイ!」
すごく気分が高揚してるのが分かります。
「ンマイ! ンマイ!」
何度もそう言いながら、ラレアトが残りのトイラを次々と口に運び、あっという間に食べてしまいました。
『美味しいよりももっと美味しいのを、『美味い』って言うんだ』
伍長がそんなことを言ってたのを覚えてたんでしょうね。
こうしてレギラの野草スープとボゼルスの<トイラの蒸し焼き>を食べ比べたラレアトに、
「どっちが美味しかった?」
と尋ねます。もしこれで勝敗が決すればひょっとしたらもうそのまま屋台の場所、と言うかどの屋台を使うかを自分達で納得して決めてくれるかもしれないという目算も、実はありました。
そして、ラレアトは言いました。
「トイラ、スゴク、ンマカッタ、オドロイタ! マタ、タベタイ! デモ……」
「でも…?」
ラレアトが手にしたのは、レギラの野草スープの皿でした。
「ラレアト、コッチ、スキ…! イッパイ、スキ!」
フィクションでは後から料理を出した方が勝つという展開が多いらしいけど、残念ながらそうはならなかったね。
それでも、まあ、これで双方納得―――――
「レギラ、オマエがカッた。オマエが、ツカえ」
ボゼルスは素直に負けを認めて譲ろうとしたのに、
「オレ、ラレアト、ノ、スキ、バッカリ! デモ、オマエ、ラレアト、ノ、キライ、タベサセタ! オマエ、カッタ!」
とか言い出して、
「……はい……?」
「オマエだ! オマエがツカえ!!」
「オマエ、ツカエ!!」
今度はお互いに『譲り合い』でケンカを初めて。
「はあ……」
どうやら彼らの<プライド>を刺激したようです。
『勝った方が手にするべきだ』
と。でも、お互いに自分が負けたと思ってる。負けたのに<勝った方が手にするはずだったもの>を譲られて、それが許せない。
正直、私には理解できない感覚ですけど、双方が納得してないなら、私が勝手に決めるわけにもいかず……
すると、そこへ、
「ビアンカ! 長の許可、もらってきた!」
メイミィがレミニィと一緒に戻ってきたのでした。
「ウ~……」
さすがに興味は惹かれてもちょっとまだ躊躇いはあるけれど、ラレアトは勇気を振り絞って匙を口に運ぶ。そして味わうと、
「!?」
カッと目を見開いて、
「ン、マァ~イ!」
声を上げました。
「オイシイ! オイシイヨ! トイラ、ケド、ンマイ!」
すごく気分が高揚してるのが分かります。
「ンマイ! ンマイ!」
何度もそう言いながら、ラレアトが残りのトイラを次々と口に運び、あっという間に食べてしまいました。
『美味しいよりももっと美味しいのを、『美味い』って言うんだ』
伍長がそんなことを言ってたのを覚えてたんでしょうね。
こうしてレギラの野草スープとボゼルスの<トイラの蒸し焼き>を食べ比べたラレアトに、
「どっちが美味しかった?」
と尋ねます。もしこれで勝敗が決すればひょっとしたらもうそのまま屋台の場所、と言うかどの屋台を使うかを自分達で納得して決めてくれるかもしれないという目算も、実はありました。
そして、ラレアトは言いました。
「トイラ、スゴク、ンマカッタ、オドロイタ! マタ、タベタイ! デモ……」
「でも…?」
ラレアトが手にしたのは、レギラの野草スープの皿でした。
「ラレアト、コッチ、スキ…! イッパイ、スキ!」
フィクションでは後から料理を出した方が勝つという展開が多いらしいけど、残念ながらそうはならなかったね。
それでも、まあ、これで双方納得―――――
「レギラ、オマエがカッた。オマエが、ツカえ」
ボゼルスは素直に負けを認めて譲ろうとしたのに、
「オレ、ラレアト、ノ、スキ、バッカリ! デモ、オマエ、ラレアト、ノ、キライ、タベサセタ! オマエ、カッタ!」
とか言い出して、
「……はい……?」
「オマエだ! オマエがツカえ!!」
「オマエ、ツカエ!!」
今度はお互いに『譲り合い』でケンカを初めて。
「はあ……」
どうやら彼らの<プライド>を刺激したようです。
『勝った方が手にするべきだ』
と。でも、お互いに自分が負けたと思ってる。負けたのに<勝った方が手にするはずだったもの>を譲られて、それが許せない。
正直、私には理解できない感覚ですけど、双方が納得してないなら、私が勝手に決めるわけにもいかず……
すると、そこへ、
「ビアンカ! 長の許可、もらってきた!」
メイミィがレミニィと一緒に戻ってきたのでした。
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