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第三部
間をもたせるためにも
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「……」
レギラは、兎人が基本的に食べないトイラを用意したことを、嘲ったりしませんでした。グルメ系のフィクションなんかではここでレギラがボゼルスを見下したりするところでしょうけど、ボゼルスとて兎人であるラレアトがトイラを好まないことくらいは知っているのを、レギラも承知してるのでしょう。
油断なくボゼルスの様子を窺いつつ、自分の料理に集中していました。フィクションの中で相手を嘲ったり見下したりするのは、後のカタルシスを得るための<演出>であることがよく分かります。相手が突拍子もないことを始めたら、それが何を意味するものなのか警戒するのが普通でしょうね。ましてや、相手の腕前を知っているなら。
その上で、惑わされることなく自分の料理に集中するのが<料理上手>というものなのかもしれません。
なので、フィクションとして見れば実に地味な<絵面>が展開されているだけでした。どっちも大袈裟なリアクションを取るでもなく淡々としているだけですから。
正直、
『間をもたせるためにも何らかの<演出>は必要なんだろうなあ……』
と思ってしまいました。
だって何気に退屈なんです。ただ待ってるだけなのは。
そしてそれはラレアトも同じ。ナヌヘを使った料理には興味を引かれながらも、さすがに長々と待ってるのは辛い。その所為か、自分の毛繕いを始めてしまいました。
先が細かく分かれた小枝を何本も束ねた<ブラシ>で、頭とか腕とか脚とかをブラッシング。枝に絡まった抜け毛を摘まんで集めて丸めて、
「ハイ、ビアンカ」
ピンポン玉くらいになった<毛玉>を私に差し出してきました。私が<フェルト人形の材料>として獣人達の抜け毛を欲しているのをよく知ってて、彼女も頻繁に提供してくれるんです。
「ありがとう♡」
私もそんなラレアトの様子を見ている方が楽しかったので、つい、笑顔になってしまいます。
とは言え、レギラとボゼルスも真剣にやっているのですから、あまり退屈そうにしてるのも失礼ですけどね。
でも、その時、
「デキタ!
先に声を上げたのはレギラの方でした。そして彼は、竈から土器の鍋を下ろして、やはり土器の皿に料理を盛りつけます。
そこに現れたのは、真っ赤な野菜スープでした。ナヌヘの色素が溶け出して赤く染まっているんです。でもその赤さは<辛さ>を連想させる感じの赤じゃなく、どちらかと言えば<イチゴジャムの赤さ>って感じでしょうか。スイーツ的な赤さって印象だったのでした。
レギラは、兎人が基本的に食べないトイラを用意したことを、嘲ったりしませんでした。グルメ系のフィクションなんかではここでレギラがボゼルスを見下したりするところでしょうけど、ボゼルスとて兎人であるラレアトがトイラを好まないことくらいは知っているのを、レギラも承知してるのでしょう。
油断なくボゼルスの様子を窺いつつ、自分の料理に集中していました。フィクションの中で相手を嘲ったり見下したりするのは、後のカタルシスを得るための<演出>であることがよく分かります。相手が突拍子もないことを始めたら、それが何を意味するものなのか警戒するのが普通でしょうね。ましてや、相手の腕前を知っているなら。
その上で、惑わされることなく自分の料理に集中するのが<料理上手>というものなのかもしれません。
なので、フィクションとして見れば実に地味な<絵面>が展開されているだけでした。どっちも大袈裟なリアクションを取るでもなく淡々としているだけですから。
正直、
『間をもたせるためにも何らかの<演出>は必要なんだろうなあ……』
と思ってしまいました。
だって何気に退屈なんです。ただ待ってるだけなのは。
そしてそれはラレアトも同じ。ナヌヘを使った料理には興味を引かれながらも、さすがに長々と待ってるのは辛い。その所為か、自分の毛繕いを始めてしまいました。
先が細かく分かれた小枝を何本も束ねた<ブラシ>で、頭とか腕とか脚とかをブラッシング。枝に絡まった抜け毛を摘まんで集めて丸めて、
「ハイ、ビアンカ」
ピンポン玉くらいになった<毛玉>を私に差し出してきました。私が<フェルト人形の材料>として獣人達の抜け毛を欲しているのをよく知ってて、彼女も頻繁に提供してくれるんです。
「ありがとう♡」
私もそんなラレアトの様子を見ている方が楽しかったので、つい、笑顔になってしまいます。
とは言え、レギラとボゼルスも真剣にやっているのですから、あまり退屈そうにしてるのも失礼ですけどね。
でも、その時、
「デキタ!
先に声を上げたのはレギラの方でした。そして彼は、竈から土器の鍋を下ろして、やはり土器の皿に料理を盛りつけます。
そこに現れたのは、真っ赤な野菜スープでした。ナヌヘの色素が溶け出して赤く染まっているんです。でもその赤さは<辛さ>を連想させる感じの赤じゃなく、どちらかと言えば<イチゴジャムの赤さ>って感じでしょうか。スイーツ的な赤さって印象だったのでした。
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