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第三部
調理法
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ボゼルスがトイラを蒸し焼きにしているのを見て、ラレアトは顔をしかめました。無理もありません。<蕗>に似た植物であるトイラには独特の苦みがあり、ラレアト達兎人は基本的に食べません。山羊人も、食べるのは大人の一部だけで子供は食べないと聞きます。
対して、レギラが土器の鍋に入れて煮始めたナヌヘは、兎人や山羊人の子供達がおやつとして好む、見た目はブルーベリーに似た甘い果実なので、ナヌヘに興味が向くのも当然でしょう。この時点では、圧倒的にレギラに分があります。
しかし、ボゼルスは気付いているのでしょう。トイラは生で食べると苦みが強く出ますが、火を通すとそれが抑えられ、代わりに甘みが強くなるんです。私達<元地球人>は様々な調理法を知っているのでそれを基にいかに食事を楽しむかと研究も続けてきましたが、獣人達の食生活については敢えて積極的には干渉しませんでした。何しろここの植物の多くは私達<地球人の肉体を持つ者>には消化できない成分が含まれており、彼らが普通に食べているものが私達には食べられないので、調理法を試すこともできないのですから。
ゆえに彼らにはあくまで独自の食文化を歩んでもらうことにしているんです。その中で、偶然とはいえボゼルスはトイラに火を通すと甘くなることに気付いた。
こうやって人類は一つ一つ新しい発見を重ねて文明を築き上げていったのだというのが分かります。効率のいい<竈>の作り方は伝授しましたが、それ以外は私達が意図的に何かをしたわけじゃないんです。
彼らはちゃんと、自分で考えて自分で何かを成し遂げる、地球人類とは別の<人類>なのですから。
私達がするべきは、そんな彼らと穏当に共存すること。
『私達が彼らを導く』
なんてのは、思い上がりに過ぎません。<対ゴヘノへ用決戦兵器>についても、<ゴヘノへ御輿>についても、そして、今、準備している<祭>についても、彼らが生きる上で私達にできる<協力>をしているだけなんです。
と、私がそんなことを考えている間にも、レギラは様々な葉や茎を鍋に投入していきました。なるほど。ナヌヘの甘みを活かした<具だくさんの甘い野菜スープ>と言ったところですか。ナヌヘは、火を通すとレーズンに似た甘みになるんです。生のままだとレーズンとは全く違う甘みなんですが。いずれにせよ、甘いナヌヘが好きなラレアトには魅力的なものになりそうですね。
ですがボゼルスだって、決して負けるつもりで用意してるわけじゃないでしょう。植物の葉に包んで、焼いた石の上で遠赤外線でじっくりと火を通す。
それがラレアトにとってどんな味をもたらすのか、私も俄然、興味が出てきたのでした。
対して、レギラが土器の鍋に入れて煮始めたナヌヘは、兎人や山羊人の子供達がおやつとして好む、見た目はブルーベリーに似た甘い果実なので、ナヌヘに興味が向くのも当然でしょう。この時点では、圧倒的にレギラに分があります。
しかし、ボゼルスは気付いているのでしょう。トイラは生で食べると苦みが強く出ますが、火を通すとそれが抑えられ、代わりに甘みが強くなるんです。私達<元地球人>は様々な調理法を知っているのでそれを基にいかに食事を楽しむかと研究も続けてきましたが、獣人達の食生活については敢えて積極的には干渉しませんでした。何しろここの植物の多くは私達<地球人の肉体を持つ者>には消化できない成分が含まれており、彼らが普通に食べているものが私達には食べられないので、調理法を試すこともできないのですから。
ゆえに彼らにはあくまで独自の食文化を歩んでもらうことにしているんです。その中で、偶然とはいえボゼルスはトイラに火を通すと甘くなることに気付いた。
こうやって人類は一つ一つ新しい発見を重ねて文明を築き上げていったのだというのが分かります。効率のいい<竈>の作り方は伝授しましたが、それ以外は私達が意図的に何かをしたわけじゃないんです。
彼らはちゃんと、自分で考えて自分で何かを成し遂げる、地球人類とは別の<人類>なのですから。
私達がするべきは、そんな彼らと穏当に共存すること。
『私達が彼らを導く』
なんてのは、思い上がりに過ぎません。<対ゴヘノへ用決戦兵器>についても、<ゴヘノへ御輿>についても、そして、今、準備している<祭>についても、彼らが生きる上で私達にできる<協力>をしているだけなんです。
と、私がそんなことを考えている間にも、レギラは様々な葉や茎を鍋に投入していきました。なるほど。ナヌヘの甘みを活かした<具だくさんの甘い野菜スープ>と言ったところですか。ナヌヘは、火を通すとレーズンに似た甘みになるんです。生のままだとレーズンとは全く違う甘みなんですが。いずれにせよ、甘いナヌヘが好きなラレアトには魅力的なものになりそうですね。
ですがボゼルスだって、決して負けるつもりで用意してるわけじゃないでしょう。植物の葉に包んで、焼いた石の上で遠赤外線でじっくりと火を通す。
それがラレアトにとってどんな味をもたらすのか、私も俄然、興味が出てきたのでした。
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