獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第三部

物品の一覧

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取り敢えず私が間に入ることで、レギラとボゼルスの緊張状態はある程度の均衡を保つことができました。おさに<角相撲>の許可をもらいに行ってもらったので、いくらか抑えることはできるでしょう。

でもそこに、

「タベモノ、ノ、ヨウイ、コレデイイ?」

ラレアトがまた私に話し掛けてきます。その手には、木の皮で作った筆記媒体(紙の代用品)が。

彼女は、しゃべるのはまだ得意とは言い難いですが、文字は、日常使う分についてはほぼ完璧に覚えていて上手に書けるので、<書記>としても優秀でした。各集落から祭のために提供してもらえる物品の一覧をまとめるのも彼女の役目です。

「ありがとう。ご苦労さま」

言いながら受け取った筆記媒体には、<字の上手な子供>が書いた感じの文字が並んでいます。伍長が先にこの世界に現れて日本語を伝えたので、基本的には平仮名・片仮名が使われています。加えてアラビア数字。さすがに漢字まではハードルが高かったので伝えてないそうですが。

それに、今の時点の獣人達の語彙であれば、平仮名・片仮名だけでもそれほど困らないでしょう。人や物の<名前>は片仮名で。それ以外は平仮名でという使い方で十分に読みやすくなりますしね。

『キタトジン ナヌヘ13 ノルタ32 トイラ40 ルロ15 ラシラ30 フルラ40 タチャ20

ミナミトジン ナヌヘ16 ノルタ25 トイラ60 レソホ60 ヌヒ18 ルルレ20 

ヤギジン タチャ30 ヌスル60 カシュス50 ホトロ60 フアマ40 

ネコジン ジズ16 シュハソ16 アッパ23 ルジョ22 

キョウジン ジズ26 シュハソ22 ショハ40 アルフ33 オッポ34 

ソジン ナヌヘ40 ルルレ30 ホトロ50 ヌスル30 ボルハ33 フアマ30』

と、各集落からの提供してもらえる物品(と言うか今回のはすべて食品ですね)の一覧が記されていました。丁寧に書かれているから実に読みやすい。

<表>の形にしてもらえていればもっと見やすくはなりますけど、そこはまた、彼ら自身が工夫して発達させていってくれればいいということで。

「うん。よく書けてるよ。上手だね」

私が笑顔で労うと、

「ウヘヘ~♡」

ラレアトも満面の笑顔で照れました。本当に嬉しそうな彼女の顔を見てると、私まで嬉しくなってきます。

提供されたそれらは、屋台で提供される食事の材料となります。自分達の種族は食べなくても他の種族は食べるものが提供されている例も多いですね。自分達は利用しないけれど他では役に立つものを提供するというのは、賢いやり方と言えるでしょうね。

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