獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

<ゴヘノへ御輿>、ここに完成

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そう。『手間を取らされる』こと自体が、管理監督者の役目なんです。そういう手間を掛けされられることを拒むなら、『手間がかからないように最初から完璧にできる』なら。最初から管理監督役なんて必要ありません。できないからこそ管理監督役はいるんです。

だから私達は私達の役目を果たす。

縄を三重に掛けるところを、長さが足りなかったから二重で済ませたという部分もありましたが、

「言われたとおりにできない時には確認するようにお願いします」

と伝えただけで、新たにその上から二重に縄を掛けるようにして補強しました。ただ、そうすると他のところに思わぬ負荷がかかる可能性がありましたので、そちらも合わせて対処します。

最終チェックは、こういうことの連続です。一度で完璧になることは滅多にない。

私達が軍にいた頃もそうでした。何度も繰り返してきたことについてはしっかりできていても、それまでとは全く異なる作戦などの場合には、『やったつもりができていない』というのが何度もありました。だからこそ、何度も繰り返して精度を上げていくんです。そういうものです。



そして、この<最終確認>には、三日を要しました。けれど、そうやって手間を掛けたからこそ、

「皆さん、ご苦労様でした。<ゴヘノへ御輿>、ここに完成です!」

少佐がそう宣言した時、

「ウオオーッッ!!」

皆が歓声を上げ、目的を達成した喜びもひとしおでした。それでも、当初予定していたよりも三十日も早く終えられたのです。これは、私達地球人が、同じ条件で作業を行った場合を想定しての予定でした。『嫌々ながら仕方なく』作業を行っている者が少なからず混じっているがゆえにペースが上がらないことも想定しての。

ですが彼らにはそういう者がとりわけ少なかった。それがペースを上げたんでしょう。

それだけならもっと早く終わっていたでしょうが、真面目かつ熱意がこもってるがゆえに入れ込みすぎてペースが上がらなかった分、時間がかかってしまったという面もあるでしょうね。

いずれにせよ……

「完成しましたね……」

「ああ。彼らの能力の高さ意識の高さには驚かされた。<対ゴヘノへ用決戦兵器>の時には急いだこともあって不具合も散見されたが、今回の<ゴヘノへ御輿>は非常によくできてると思う。正直、<対ゴヘノへ用決戦兵器>についても、改めて作り直したいぐらいだよ」

「同感です」

少佐のおっしゃる通り、よくよく見比べれば突貫工事で作られた<対ゴヘノへ用決戦兵器>よりも<ゴヘノへ御輿>の方が出来がいいんですよね。

だけど、そういう部分を洗い出すことも今回の<ゴヘノへ御輿建造>の目的でもある。

<祭>本番でそれぞれをぶつけることで改善点を炙り出すんです。



それでも、今この一時ひとときだけは、完成の余韻に浸っていたい。

だから私は、少佐の肩に頭を預けます。

そんな私の肩を、少佐が抱いてくださったのでした。

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