獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

私は私

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『親に対する誤解に気付き、互いにすれ違いを乗り越えて親と子が感動的な和解に至る』

ドラマとかでは定番の展開ですけど、それがウケるのは、結局、そんなことは実際には滅多にないからでしょうね。

私も、両親とは決定的な対立こそしてなかったものの、決して心から許してはいません。わだかまりは今もしっかりと残っています。

それでも、自分も人生経験を積んだからこそ、あの人達についてはもうなるべく気にしないようにと思えるんです。

もっとも、それは、私自身は『地球人じゃなくなった』からというのも大きいでしょうけどね。

<データヒューマン>を経て、さらに地球人では決して有り得ない透明な体に生まれついたことで、どれほど<地球人ビアンカ・ラッセ>の記憶と人格を持っていても、私はもう、<地球人ビアンカ・ラッセ>ではない。

<地球人ビアンカ・ラッセ>ではなくなったことで、<地球人ビアンカ・ラッセの両親>とも実質的な縁は切れてしまった。法律上、両親は今の私に対して何の責任も負わず、私も両親に対して何の責任を負うこともない。

なにしろ、<地球人ビアンカ・ラッセの記憶と人格を有しているだけの別人>なんですから。

少佐も、<地球人久利生遥偉くりうとおい>ではなくなったことで<久利生くりう家の嫡男>としての重責から解放されましたし、それと同じことです。

完全には割り切れてない部分もありつつ、『私は私』ですから。私はここで生きている。

<ゴヘノへ御輿>の建造は、私にとってはそういう意味も込められたものと言えるでしょうね。



そしていよいよ、<ゴヘノへ御輿>の姿が整ってきました。

むろん、木材で組まれた御輿に過ぎませんが、それでも、ゴヘノヘの威容をかなり再現できているのではないでしょうか。

レミニィなどは怯えてしまって、近付きたがらないそうです。仕方ないので、食事の運搬はメイミィが一人で行っています。いえ、メイミィの集落の担当者は他にもいますけど、メイミィとレミニィが二人一組だったのがメイミィ一人になってしまったという意味で。

「レミニィは大丈夫?」

私が問い掛けると、

「ダイジョウブ」

メイミィが穏やかに応えてくれました。その様子から、確かにレミニィも落ち着いているんだと分かります。もし違っていたら、彼女はすぐ表情に出ますから。

ほぼ全体が組み上がり、後は細かい仕上げと、各部がしっかりと確実に接合されているかの確認です。もしどこか不十分な部分があればそこに応力が集中して崩壊する危険性すらありますからね。

疎かにはできません。

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