獣人のよろずやさん

京衛武百十

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第二部

残念な地球人の悪癖

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そうして<よろずや>に帰った私と少佐を、

「オカエリナサイ」

と、フロイが出迎えてくれる。ちょうど、店の商品でもある干し肉で食事にしているところでした。彼らにはまだ<商売>というものが十分に理解できていない上に貨幣制度がないため<給与>という形が取れず、代わりに、店の商品で食事を摂ってもらうことを認めています。

貨幣制度ができ、<商売>というものが成立するようになればいずれは改めていかないといけない部分でもありますが、少なくとも今はそれで上手くいってるのですから、これでいいでしょう。

それに、『商品を自由に食べていい』とすることで実は<窃盗対策>にもなっている面もある。

これは、貨幣制度が成立していないことで、

『商品を盗んでそれを換金する』

ということができないからこそ防げるという面もありつつですが。

『その商品そのものがほしい』

という場合でも、いつでも好きに手にできるわけで、盗む必要もない。

地球人の社会が一気に拡大したのは貨幣制度の導入と経済原理の成立が大きかったでしょう。なので、ここでもいずれはそうなっていくかもしれない。

でも、実際にそうなっていくかどうかは、彼らが決めることです。私達が決めることじゃない。

そして、フロイは勤勉に働いてくれています。そのことに私達はとても感謝している。

感謝しつつ、今日も<現場に来た獣人達が持ち寄ってくれたことで仕入れた品物>を商品にするために加工を行ったりすることについても、フロイにも習得してもらいます。

その分、私も少佐も『仕事が終わらない』ですが、今はまだ仕方ないですね。それに私達はいわば<役職>なので、どこまで働くかは自分で決める立場ですし。

肉体や精神との兼ね合いも、自らの責任において行う。

ただし、自分がそうしているからといって従業員に同じことは求めません。<立場の違い>をわきまえればこそ。

それをわきまえない者が役員を務める企業は本当に不幸ですね。

かつて、人間の従業員が負担していた過重労働をロボットが肩代わりしてくれるようになったことで、法に背かなくても十分に利益が出せるようになりました。にも拘わらず、さらに法に背いてまで暴利を貪ろうという者もいます。ゆえにそういう者には厳重な罰が課せられる。<懲役数十年>というのも珍しくありません。

『法を順守していては経営を維持できない』

という言い訳は通用しなくなったからです。にも拘わらず、過剰な富を求める者は後を絶たない。

これも、<残念な地球人の悪癖>というものなのでしょうね。

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